2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

小学5年生の部 最優秀賞

最初に動くその誰か
湘南白百合学園小学校
鈴木 すみれ

 JR南浦和駅で、七月二十二日、ホームと車両の間に挟まれた女性客を、乗客と駅員が救出したという記事が目に留まった。この記事は、海外でも報道され、各国で絶賛されたという。
 ―自分達の国で同じ事故が起こっても、乗客は眺めるだけで何もしないだろう。
 ―日本だけでおこりうること。
 女性が転落したことに気づいた人はすぐに「列車非常停止ボタン」を押した。駅員が駆けつけ、車両を押したところ、周囲の人達も一緒に押し始めた。ラッシュ時にもかかわらず、車内の人達は自主的に、ホームに降りた。
 もし、わたしが事故の現場に居合わせていたら、どうしただろう。
 「せーの!」
 というかけ声が聞こえたなら、隣の人が押し始めたなら、わたしも同じことをするかもしれない。でも、「最初に動く人」になれるのか、その自信はない。瞬時に判断して、行動に移す人がいたから、それを良いことだと察して、皆が力を合わせたから、女性を救出することができたのだ。
 ロイヤルベビー誕生に湧く英各紙では、この救出劇を「英雄的」と評したが、これは、一般的なヒーローという意味ではないと、わたしは思っている。東日本大震災で極限状態におかれた被災地で、人々が整然と列を作っていたことが世界を驚かせたように、日本人の、ピンチでも諦めない、かえって一致団結する姿に、外国の人達は賛辞を送ってくれたのではないだろうか。
 そして、祖母の話も思い出した。祖母は学生の頃、超満員の電車から降りようとして、お箸箱を車内に落としたことに気がついた。
 「えっ? 何? 箸箱落としたってよ~!」
 大声をあげてくれた男性から次々と伝言ゲームのように伝わって、ついに、「箸箱、あったぞ~!」。
 電車が停まっていた僅か二分の間に、バトンのように手から手へ渡り、そのお箸箱は祖母の手元へ戻ってきたのである。張り上げてくれた声を祖母は今でも覚えているという。
 同じ電車で通学しているわたしは、駅での言い争いを見たことがあるし、人身事故後の大混乱では、イライラモードが最高点に達することもよく知っている。
 しかし、誰かのために力になりたいという気持ちを持てば、それが周りの人に伝わって、計りしれないパワーを生み出すのだ。最初に動くその誰か―に、わたしはなりたい。

課題(1)(読売新聞 7月26日付)
「電車押し乗客らが女性救出/海外で絶賛報道」

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