2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

中学1年生の部 優秀賞

未来は私たちの力で~勇敢な少女に学ぶ~
鎌倉市立大船中学校
熊木 ひと美

 日本に暮らしていると、私たちは当然のように、教育を受けることが出来ます。日本国憲法では、誰もが等しく、能力に応じて教育を受ける権利が保障されています。保護者は子どもに、教育を受けさせる義務を負っています。
 一方で、世界に目を向けてみると、日本のような環境ではない国や地域がたくさんあります。新聞によると、発展途上国や紛争地などを中心に、約五七〇〇万人もの子どもたちが学校に通えない、とありました。直ぐに想像し難い数字ですが、多くの子どもたちが学校へ行けない状況に、同じ立場の子どもとして切ない気持ちになります。
 その教育の機会のために、命を懸けて闘い続ける少女がいます。パキスタンの女子学生マララ・ユスフザイさん、十六歳、私より少し年上のお姉さんです。
 彼女は、女子にも教育を受ける権利があると、訴えています。そうした彼女の考えは反政府武装勢力・タリバーンに目をつけられ、昨年十月、下校途中に襲撃されました。銃で頭部を撃たれたという報道を耳にした時、私は胸が張り裂けそうな思いでいっぱいでした。銃で頭を撃たれるなんて、どんな状況になるのか、私の想像を超えていて、ただただ苦しい思いでした。
 「今日はどうしているだろう、どうか助かって欲しい」と、毎日、祈るような気持ちで何か吉報はないかと新聞をめくりました。
 世界中に、私と同様、マララさんの回復を祈る人々がたくさんいて、彼女も生きようと頑張りました。そして彼女は奇跡的な回復を遂げました。
 今年の七月十二日、この日は彼女の十六歳の誕生日でした。国連は「マララ・デー」として、彼女と世界の若者たちを国連本部に招待し回復を祝いました。そこでの彼女の演説は、本当に感動的でした。
 「知識という武器で力をつけよう。連帯することで自らを守ろう。本とペンを手に取ろう、それが一番強い武器。一人の子ども、一人の先生、一本のペン、そして一冊の本が世界を変えられるのです。」
 彼女の演説を何度も読み返し、私は「教育」について考えてみました。夏休みに宿題のため、ユニセフの資料を読んだ時のことです。資料によると、アフリカには、親が字を知らないため、予防接種のお知らせを読めず、子どもが接種を受けていない、結果として多くの子どもが亡くなってしまう、とありました。親が予防接種の重要性を知らない現状も書かれてあり、教育の大切さを物語っています。
 私は本を読むことが大好きです。本を読むことで、それまで知らなかった世界を知ることが出来ます。しかし「文字を知る」教育の機会がなければ、「文字を読む」ことは出来ません。「文字を読む」ことが出来るということは、よりよく生きるための第一歩ということになります。
 私たちは、教育を保障された国に生きる者として、平和な国で学ぶことが出来る者の責任として、教育の先に何があるのか考えていく必要があります。「知識」をエネルギーにして、「知恵」を出し合い、よりよく生きる社会を自ら作っていくこと、それは未来を生きていく私たちの使命ではないでしょうか。
 十代の私たちは、もう大人への入り口にいるような気がします。世の中の困難な出来事から目を背けず、少しずつ向き合っていかなくてはならないのかもしれません。世界には教育の大切さを命懸けで訴える十代がいる、私に何が出来るだろうか…。少なくとも、困難なことから逃げずに向き合える人間でありたいと、今、私は思っています。ひとりの勇敢な少女の姿に、そう教えられました。

課題(1)(朝日新聞 7月13日付)
「本とペン、一番強い武器/マララさん国連演説」


高安さんからのメッセージ
平塚市立神明中学校
平野 朋子

 真っ赤な衣装に、まっすぐな眼差しでこちらを見ている女性の写真が印象的で目に止まりました。
 その女性は、高安京子さん。脱北者という身の上で少しずつ貯めたお金で、ネパールに学校を建てたという記事に驚きました。
 私は「脱北」という言葉を知らなかったので調べてみると、生活苦または政治的な理由で北朝鮮から逃れる事で、脱北に失敗すると重い刑になるとも書かれていました。
 高安さんはそんな危険を冒してまで脱北したのです。それは、生活が苦しかったという理由の他に、スポーツ選手としてトップクラスだった彼女が、北朝鮮では「出身成分」が悪いと見られて、どんなに努力しても認めてもらえないという辛くて悔しい思いをし、夢や希望を持てなくなってしまったからだと思いました。そして、国を出てまでも「自分の人生を生きたい」という思いがどれほど強かったのかが感じられました。
 脱北した後、二十才で言葉も分からず、頼れる親戚もいない日本で、日本語を学び働きながら夜間中学、定時制高校を卒業して大学にも通っていることも、私には考えられない程の努力です。高安さんの自分の人生を生きる思いの強さとくじけない意志の強さ、そして真面目な姿勢に感動しました。
 そして更に、働きながら学校へ通い、北朝鮮の家族への仕送りもしていて自分のことだけでも精一杯のはずなのに、高安さんはネパールの子供達のために学校をつくりたいと、自分が働いたお金を貯めて実現しています。私は信じられない気持ちでいっぱいになりました。そして私は、こんなに恵まれた環境で育っているのに、自分のことで精一杯で、今、私がもっている力や時間を誰かの為にと考える余裕もない自分を恥ずかしく思いました。高安さんは夢をあきらめる辛さや、貧しさのために夢を持つことも知らない悲しさを誰よりも強く感じたことがあったからネパールの子供達の現状を知った時、助けたい思いで行動したのだと思います。
 初めて村を訪れた時に、子供達が「キョーコ、キョーコ。」と集まってきた感激を忘れないと言っています。高安さんが日本に来てからしてきた努力は、最初からネパールの子供達のためにしていたのではなかったと思います。自分の人生を生きるためだったはずです。でも、ネパールの子供達のためにしたことで子供達の歓迎を受けた時、人の喜びが自分の喜びに変わることに気づき、人のために生きることが、自分の人生を生きることになると感じたのではないでしょうか。
 私は以前読んだ本の中で「生きるということは、自分にあたえられた時間を使うことで、自分の時間を人のためにどれだけ使うことができるかが素晴らしいことで、自分の人生を幸せにしてくれることにつながること。そして人のために自分の時間を使える大人になりなさい。」と書かれていたことを思い出しました。例えば、私がお手伝いをすると、家族が喜び、自分も幸せな気持ちになれるということです。
 私達はいつも、自分のために努力したいと思い、自分が評価されることに満足し、「自分のため」から離れられません。高安さんは、自分の経験を通して、努力し、評価された力を人のために、人を喜ばせるために使いました。そうすることにより、人と出会い、自分の人生が広がって、自分の喜びに変わり素晴らしいものになると私達にメッセージを送ってくれたのだと思います。私が今している努力や私の力が将来、人のために使える人になりたいです。

課題(1)(朝日新聞(夕刊)8月20日付)
「脱北10年 生きる喜び伝えたい/都内の29歳高安さん」

問い合わせ先
神奈川新聞社
かながわ「新聞感想文コンクール」事務局
電話:045-227-0707(平日、午前9時半~午後6時)

(C)2010 Kanagawa simbun All Rights Reserved.

当WEBサイトの記事、画像などの無断転載を禁じます。すべての著作権は神奈川新聞社に帰属します。