2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

中学3年生の部 優秀賞

悲劇をくり返さないために
横須賀市立鷹取中学校
早川 瑠璃子

 この記事を半分ほど読んだあたりから、涙で文字が読めなくなってしまった。
 去年の十二月、給食の粉チーズ入りチヂミをおかわりしたことによりアレルギーのアナフィラキシーショック症状を起こし、死亡してしまった女児がいた。その記事には、亡くなった少女の母親が新聞の取材に応じた時の話と、今後の給食時のアレルギー対策について載っていた。
 私自身、何種類かの食物アレルギーを持っている。おととしあたりからいきなり、リンゴ、ナシ、モモなどの果物を食べると息苦しくなるようになった。少しずつ食べられない種類が増えていて、症状も悪化していて、今年になってからイチゴやブドウも食べられなくなった。今では、果物を食べること自体に恐怖を持っている。そして、アレルギーが発症してからは食物アレルギーを持つ人にしかわからない苦労が私にもわかるようになってきた。例を言えば、コンビニで菓子パンを買いたいと思っても、一回一回裏に表示されている原材料を見て、アレルギー物質が含まれていないかチェックする必要がある。外でアイスを買おうと思っても、店員さんに成分表を見せてもらわなければならない。自分の命を守るためだとはいっても、結構大変な作業だ。
 乳製品アレルギーだったというこの少女には、おそらく私とは比べものにならないほどの苦労があったのだろう。その苦労は私には想像もつかないが、記事を読んでこの事故は私にとって他人事ではないと感じた。
 記事にはこう書いてあった。母親が少女の親友に聞いた話によると、少女が給食をおかわりした理由は「少しでもクラスに貢献したかった」から。そのクラスでは給食を残さない完食記録を目指していたらしい。そして、問題のチーズ入りチヂミは不人気で大量に残っていたという。なんということだろうか。少女はクラスに貢献したい、という素晴らしい善意の行動によって、その幼い命を落としたのだ。
 また、少女は生命科学に興味を持っていて、将来は自らと同じアレルギーの子供たちを助けるための研究がしたいと語っていたそうだ。「この手で科学を学びたい」という言葉とイラストも遺している。このことを知って、私はさらに驚かされた。偶然なのか、私も似た夢を持っている。私は将来、アレルギーの治療薬を開発する研究をしたいと思っているのだ。
 この小さな新聞記事によって、少女の果たせなかった思いと私の夢がつながった。少女の事故、そして死が、私の背中を大きく押してくれた。私は、少女のような悲しい事故を無くすために、食物アレルギーを持つ人間すべての苦労を少しでも減らすために、少女のことを片時も忘れず夢へ向かって努力していきたい。

課題(1)(朝日新聞 7月24日付)
「おかわり『クラスのために頑張ろうと』」


「ドボジョ」って何?
川崎市立野川中学校
大山 智加

 「ドボジョ」世界へ。大きな見だしに驚いた。いったいドボジョって何? 写真の中央には、ヘルメットをかぶり作業服を着て、何かを指さしてニコニコしている女性の姿がうつっていた。そしてその周りにはヘルメットをした外国人男性が五人、女性をとり囲んでいた。女性は高原郁恵さん(二九才)。記事を読むと、その女性は、大成建設の土木技術者ということがわかった。
 今、日本では「歴女」(歴史が好きな女性)、「理系女」(理系が得意な女性)など、○●系女子という言葉を短くして、新しい言葉ができている。その中の「ドボジョ」ということだ。土木に携わる女性技術者は「ドボジョ」と呼ばれるそうだ。ドボジョを主人公にした同名マンガ本が人気を集めていたりしているらしく、土木業界で働く女性が注目されているようなのだ。
 私も中三の女子。とりあえず今は高校受験に向けて一生懸命勉強している。ただ、将来何の仕事をしたいかは、まだ決めていない。一応、一般的な高校に進むつもりではいるけど、機械や、電気などに分かれる工業系の分野にもチャレンジしてみたいのも事実。父親が、そういう仕事に携わっているせいもあるかもしれないが、普通の会社の事務職よりは格別やりがいのある仕事。
 この記事でも、ものすごく大きい仕事に携わっていることがわかった。工事の内容は、ボスポラス海峡を挟み、ヨーロッパ側とアジア側にわかれるイスタンブールを海底トンネルで結ぶ鉄道建設。その中でヨーロッパ側の地下約五〇メートルにほぼ完成した「シルケジ地下駅」の換気口建設工事を受けもっているとのこと。この鉄道建設は、国家の一大プロジェクト。国民の夢を形にしていくなんて土木技術者冥利に尽きます。そう気負うのも無理はない。「トルコ国民一五〇年の夢」の工事なのだから。
 さて、高原郁恵さんという人は、群馬大工学部を卒業し、二〇〇七年、大成建設で女性二人目の「総合職」の土木技術者。道路工事などで実績を積み、大成建設で初めて海外赴任する「ドボジョ」に抜てきされた人物。子どもはいないが結婚もしている。
 私は土木の仕事のことについて調べてみた。二〇〇七年、労働基準法が改正され、女性がトンネル工事や、鉱山で働けるようになった。それまでは、「女性が坑内に入ると山の神が怒る」などという迷信があった。とにかく作業現場というのは、3K!! 危険・汚い・キツイということ。女性は男性に比べると腕力が劣る。お手洗いも遠い場所にあったりと、まだまだ、女性が平気で仕事ができるところではないようだ。しかし、近年、若手の女性の技術者が増えてきている。業界全体として若手の人材が不足している影響もあってか、女性も積極採用する企業が増えてきているとのこと。女性ならではの、きめ細やかな視点が加わることで、職場の安全性が向上したり、作業現場の近隣に住む人への好感度が高まっているそうだ。
 まだまだ、女性にはできない仕事も世の中には沢山あるけど、男性社会の中に、女性が入って行くという大変さ、私も将来、どんな仕事をするかはまだわからないが、気持ちをしっかりもって頑張っていきたいと思う。
 高原さんの言葉。
 「実績を上げれば、男も女も関係ない。それが仕事だとわかった今は、自信もついて、肩の力が抜けました。土木の世界で、女性が当たり前のように働ける。その開拓者でありたい」
 私はこの記事を読んで、これからの自分の将来を考える一つの手掛かりをつかんだと確信している。

課題(1)(読売新聞 7月28日付)
「『ドボジョ』世界へ」

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