2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

小学5年生の部 優秀賞

「風化なんてさせない」
横浜市立荏田南小学校 五年 中島 万賀

 今でも東日本大震災の記事を多く目にする。その度によみがえる記憶。宮城県亘理町に住んでいた祖母の家での光景だ。一階の天井までドロだらけの部屋。鼻の奥につんとくるような磯のにおい。つながらなかった携帯電話。

 東日本大震災から三年半。この夏に再びおとずれた祖母の家のあった場所。そこはもう、さら地となり、どこに家があったのかもわからないほど草が生い茂っていた。その光景を見て呆然とし、私はその場に立ち尽くした。

 それから一週間後、「被災地の高校生が『ツタエル』写真展」という記事を見た。「被災地の今を国内外に伝えるのが自分の使命」とシャッターを切り続けた、千葉さんの思いを感じたいと思い足を運んだ。

 写真展では、津波の被害を受けた中学校や荒れたままの漁港の写真などが展示してあった。震災の被害の悲惨さだけではなく、未来への希望を感じさせる温かみのある写真も多く展示されていて、涙が出そうになった。その中でも特に心に残ったのは「記憶の風化」と題した作品だ。津波に流されたがれきの上に砂が積もり、埋もれかけている様子が写されている。「忘れてはならないものを手に入れたはずなのに復興が進むにつれて震災の記憶が消えていっている」というメッセージを込めて撮ったそうだ。

 写真のまわりにはってあった、写真展をおとずれた人のメッセージカードの一つに強く心を動かされた。「乗りこえることと忘れることはちがう。私たちは上を向き、たくさんの人に伝えて、さらに忘れてはいけないと痛感した」というものだ。私もふだん生活していると震災の事を忘れがちだった。復興も順調に進んでいると思い込んでいた。しかし、祖母の家の光景やこのメッセージからもまだ復興への道も進み始めたばかりなんだと気が付いた。

 これからも震災に関連する記事を目にするだろう。その時私は、震災の事を思い出し忘れないと心にちかいたい。

 この思いを「新聞感想文」として『ツタエル』ことで、記憶の風化をくいとめたいと思う。

課題(1)(朝日小学生新聞 7月24日付)
「被災地の高校生が『ツタエル』写真展」


小学5年生の部 優秀賞

平和な世界へ
秦野市立南が丘小学校 五年 牟田 大智

 ぼくは、昨年の夏に長崎の原爆資料館に行った。そして、資料館のことと、帰ってきてから読んだ新聞記事で、作文を書いた。その時、「戦争や原爆を無くすために、自分達がそのことをもっとよく知って、次の世代に伝えたい。」と思った。でもそれから一年、ぼくは何も実行しなかった。そして今年の夏、今度は広島の資料館へ行った。見ていくうちに、長崎で見たことを思い出してきた。広島の資料館は、残こくなイメージが強かった。皮ふがドロドロにとけた人のろう人形や、中身が黒くなったべん当箱、ガラスのはへんがささったかべや、ボロボロになった兵士の服。

 帰って来てからお母さんが、「昨年、大智が長崎に行って、原爆のことについて考えていたのを見て、一しょに行かなかった妹や弟にも、少しずつ、知ってほしいと思って、家族みんなで広島に行こうと、思ったんだよ。ママ自身も、ふだん戦争について考えることはほとんどないけど、集団的自えいけんの報道で、自分達が知らないところで戦争という道にまきこまれていくかもしれないと、不安を感じるようになったの。何ができるかわからないけど、まずは知ろうとすることが、大事だと思う。」と、話してくれた。その時一しょにわたしてくれたのがこの新聞記事だった。

 記事を読んで、「戦争の体験者だけでなく、戦争のことを知ろうとする人も、どちらもへっているから、これでは戦争のことが伝わって行かない。このままでは、だめだ。」と思った。戦争や原爆は、何千人、何万人もの人達を殺し、終わってからも、何十年にもわたって人々を苦しませる悪いものだ。今も世界では、戦争をしている国がある。今起きている戦争を無くし、新たな戦争を起こさせないようにする。そうすれば、戦争が無い平和な世界になる。そのための第一歩が、「伝える」ことなのではないかと思う。ぼくは昨年考えた、戦争や原爆のことをもっと知って、次の世代につなげるということを、これまでできなかった。でも、八月になると、資料館に行ったり、戦争についての記事を読んだりした。それはなぜかと考えてみると、終戦記念日に向けて、戦争のことが報道され、新聞にもいろいろな記事がのる。それが考えるきっかけになるからだ。八月以外でも、戦争のことは、パソコンや本で調べられる。でも、毎日家に来る新聞だから、「考えてみよう。」という気持ちになるのではないか。

 ぼくは、「伝える」ためには、「知る」ことが大切だと思う。だから、毎年八月だけでも、戦争について考えることを続けてみよう。そしていつか、自分の子どもやまごの世代に教えられればいいと思う。未来の世界に、戦争のない平和な日々が来てほしい。

課題(1)(毎日新聞 8月20日付夕刊)
「知ろうとしない怖さ」

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