2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

小学5年生の部 最優秀賞

「コウノトリが教えてくれたもの」
湘南白百合学園小学校 五年 富谷 茉央

 「コウノトリは無農薬の水田を知っている。」、「『私もがんばるから、おまえもがんばれ。』同じ生態系で生きる者同士のあいさつだ。」

 これらの言葉は、同じ自然の中でくらすコウノトリへの深い愛情と、人間も自然界の中の一員に過ぎないという、謙きょな気持ちに満ちた言葉である。

 私はこの夏、新聞で「コウノトリ野生復帰」の記事を読み、ぼう頭のこれらの言葉が深く心にひびいた。これは、兵庫県豊岡市で、農薬や化学肥料を使わないで米作りを行う「育む農法」により、野生復帰したコウノトリと共生する農業への取り組みを取材したものである。

 これまで日本の稲作は、機械を使って生産性を上げるため、水田の乾田化を進めてきたと記事にはある。そしてその結果、生態系が破壊され、水中生物が減少し、それをエサとするコウノトリやトキが一度はこの日本から絶めつしてしまった事は、だれもが知るところである。だが、その反面で機械化や農薬の使用が収穫量を増やし、私達の生活を豊かにしてきた事もまた事実である。

 しかしながら、これまで私達は自分達の生活の豊かさを優先するあまり、いったいどれくらいの野生生物を絶めつに追い込んでしまったことだろうか。一度絶めつしてしまった生き物を再び自然界で見かけるまでにするには、気の遠くなるような年月や苦労がともなう事は、トキの例を見ても明らかである。

 豊岡市の取り組みは、コウノトリ等の野生生物と共生する農業を目指し、農薬を使わない安全で安心なお米をブランド化する事で、かえって農家の収入を増やす画期的な試みでもある。その上で、豊岡市の農家の人達は、「自然との共生」を誇りにしており、その言葉には、自然に対する謙きょな姿勢と、野生生物への愛情が満ちているのである。残念ながら、私には米作りはおろか、農業自体の経験がなく、その本当の苦労や大変さは、十分には理解できない。だが、「自然との共生」を誇りとする豊岡市の農家の人達の謙きょで、まっすぐな想いは、とても尊い事だと思う。それに、記事の写真の農家の男性は、何と素てきな笑顔をしていることか!この男性の表情には、かん境や人体に悪影きょうがあると知りながら農薬を使用するのとはちがって、後ろめたさは少しも感じられず、とてもすがすがしく見える。

 このような豊岡市での取り組みがもっともっと日本中に広がっていけば素ばらしいと思う。そのためにも、私は豊岡市のような取り組みを応えんし続けて行きたい。そして、日本の農業の様々な問題について、自分なりに勉強してみたいと思った。

課題(1)(神奈川新聞 7月28日付)
「コウノトリ野生復帰」

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