2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

中学1年生の部 優秀賞

自分の世界を広げてくれた記事
横須賀市立鷹取中学校 一年 石井 日向子

 あたたかくて明るい部屋の食卓にはケーキと大好きな料理が乗り、お目当てのプレゼントがもらえるかドキドキする、それが子どものいる家庭のクリスマスだとずっと思っていました。でも、新聞に載っていた「貧困子供のSOS」という記事にあったクリスマスは、私の知っているそれとは全く違うものでした。

 十二才の女の子がクリスマスに自宅の水道を止められ、公園からペットボトルに水をくんで持ち帰り、母親とおにぎりを一つずつほおばった、という記事は、読むことを止められないくらい衝撃的でした。母子家庭のこの家では女の子の体調のため、母親は短時間しか働けず私と同じ年の女の子が「同級生とは住む世界が違うんだ」と言っている。なぜこんなに辛い思いをしなければならないのだろう。

 この記事は連載で、私は次の日の朝刊を話の続きが知りたくて広げました。その次の朝も。連載は、どの記事も私の心を強くゆさぶりました。

 シングルマザーが一人息子を育てるために必死に仕事を探す話、友達を自宅に招いたら、風呂も家具もない部屋に驚かれ、それ以降学校で孤立した話。そして記事に書かれていた少年の、「したいことは何もない、もうどうでもいい」という言葉はとても辛く胸が痛くなりました。

 私は今まで、このような貧困はテレビや小説の中の話で、自分とは全く関係のないことだと深く考えることもありませんでした。私の家は決して裕福ではありませんが、必要な学用品は用意してもらえるし、電気のついた部屋で過ごし、三食困らずに食べることができます。私の考えていた貧乏と、記事に書かれている貧困とは全く違うんだと知りました。そして、この記事に「2012年の子供の貧困率は16・3%」と書いてあり、母から「分かりやすいように、自分のクラスの人数で換算してみたら」と言われたので計算してみたら、ぼんやりと私が思っていた人数よりもずっと多く、一気に「この貧困の問題は本当の話で、自分の身近にあっても全くおかしくないんだ」と気付かされました。この記事を読まなければその事にずっと気が付かないままだったかもしれません。

 この連載の四回目に、貧困の状態にありながらも「金をかけて勉強しているやつらに負けたくない」と予備校や塾に通わず卒業生からもらった問題集をボロボロになるまで繰り返し解いて校内トップを維持し、医大を目指す高校三年生の男の子の記事が載っていました。たとえ医大に合格できたとしても、その後の生活や学費の不安は残っているけれど勉強しているその人の姿は、私の心にとても残りました。私はいつも何かと理由を見つけてはあきらめたり、途中で止めてしまっています。勉強も「疲れているから」、「明日は朝が早いから」、「まだ日にちがあるから」と、いくつも理由をつけてやらない事が多いです。私はこの記事を読んで「ふざけるな」と叱られ身が引きしまる気持ちになりました。

 今回この新聞の連載記事を読んで、自分がどれだけ恵まれているのか自覚することができました。そして、今まで全く考えたこともなかった子供の貧困について、色々と知り、どうしたら良いのか解決する手段はあるのかを考えることもできました。少し自分の世界が広がった気がします。

 新聞を広げて読んでみても、全ての記事を理解することは今はまだできませんが、自分の世界を広げるために、明日も新聞を読んでみようと思います。

課題(1)(読売新聞7月30~8月2日付)
「貧困 子供のSOS」


中学1年生の部 優秀賞

丘の上の黒電話
湘南白百合学園中学校 一年 稲森 可鈴

 この記事の黒電話の写真を見て、小さい頃に架空の電話ごっこをして遊んだことを思い出しました。電話ごっこをしているとき、楽しくて面白くていつも笑っていたと思います。私が遊んだおもちゃの電話はカラフルな色でしたが、黒電話はこの記事の重みを感じさせる色や形でした。

 電話は相手の声を聞いて成り立つものであり、なかなか会えない人の声を聞ける便利な道具です。しかしこの黒電話では相手の声が聞こえません。なぜなら線がつながっていないからです。でも、この記事を読んで、本物の線はつながっていなくても心の中に残っている人の面影があるおかげで思い出せて声が聞こえるような、話ができているような、そんな気がしてこの黒電話の役割を果たせることになっているのだと感じました。

 私はまだ近い人を亡くしたことがありません。だから黒電話の所へ行って亡くした人と話そうとする方々の気持ちはまだ完全には分かりません。でも記事を読むことで人と人とのつながりの重さを感じました。

 母に「その黒電話で話している人はどんな表情で話してると思う?想像してごらん。」と言われ、考えてみました。

 悲しみを抱えた表情のおばさん、少し涙をこぼしているおばあさん、涙をふいているおじいさん、そんな姿が浮かびました。でも、自分と同じくらいの年の人はなかなか想像がつきませんでした。もし自分だったらと考えることが怖くなったからです。そんな怖くてとても悲しい経験をした人のために佐々木さんは黒電話を設置してくれて、人の気持ちをわかってあげられる優しい人、思いやりのある人だと思います。黒電話が設置してある電話ボックスは白い格子で周りには草花が咲き誇っているようです。佐々木さんがお手入れして大事にしているのだと思います。

 また、この黒電話が設置されている場所は綺麗な海が見える高台です。普通の人が見たらただの海の景色としか捉えられないかもしれませんが、震災で津波の被害にあった人は海の恐ろしい姿を目の当たりにしたのでトラウマになってしまった景色かもしれません。それでも海の見える場所にその電話を設置したことでそれを乗り越えて今を生きる力を亡くなった方を通して与えてもらう場所にしたかったのかもしれません。

 電話だけでなく脇にはノートも置いてあるそうです。訪れた人たちが気持ちを活字に表すことで、来る前とは違う気持ちで帰れそうだし、同じような思いの他の人達の思いを垣間見ることで気持ちを共有して心の重みが少し軽くなるのだと思います。

 災害は恐ろしいものですが、人と人とのつながりや優しさを再確認できる素敵な記事だと思いました。

課題(1)(読売新聞 8月12日付)
「天国に通じる電話」

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