2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

中学1年生の部 最優秀賞

新聞から生まれた小さな旅
湘南白百合学園中学校一年 田中 千陽

 私は情報をじっくりと考え、知識に換えられる新聞が好きだ。

 テレビ、ラジオといった情報伝達手段に加えて、インターネットが普及し、現代は情報があらゆる場面であふれている。さらに、情報化社会の競争により、どんどん伝達時間が短縮され、私達は「見ただけ、聞いただけ」で情報を得て、知識としたと思っている。しかし、新聞は、字体や記事の大きさで重要性がわかり、白黒の写真で形や様子を想像し、自分のペースでじっくりと考えることができる。時には、確かめに出掛けたり、過去のものを調べたりすることもある。また、新聞が他のメディアと大きく違う点は、地域に密着した記事が毎日届くということだ。

 ある日、新聞を読んでいると、「湘南の空をかける」という文字がとび込んできた。「湘南モノレール」の乗客が開業四十四年目で四億人を突破したという記事だ。モノレールは私の通う学校のすぐそばを走っているが、通学経路の関係で乗ったことがない。ぶら下がり式の珍しいモノレールだなと、毎日眺めていた。大船から湘南江の島まで単線で三両編成にもかかわらず、年間一千万人以上の人が利用しているという。「十四分の小さな旅」の見出しと記事を読み、すぐに乗ってみたくなった。ゆっくりと楽しみたいため、学校が休みの日に乗ることにした。

 大船観音を背に出発すると、すぐに渋滞している車道が眼下に。町の建物の上をカーブを描きながらすりぬけて行く。鎌倉の緑も町の向こうに見え、広がる景色が気持ち良い。びっくりしたのは、スピードだ。思ったよりも速く、モノレールのそばの景色はかなり速く流れてゆく。そんな景色の奥、富士山が美しくたたずんでいた。工業地帯や住宅地を抜けて様々な景色を見せてくれる。緑が豊かな場所で恵まれた環境に私の学校があるのだと改めて思った。しばらくすると、前に座っていた小さな男の子が靴をぬいで、窓を覗き込んだ。ぬいだ靴から、さらさらと砂が落ちた。その様子を私が見ていると、男の子の隣に座っていたおばあさんが、「すいません。海岸の砂です。」と、言った。江ノ島で遊んで大船までモノレールで帰ってきたが、お孫さんがもう一度モノレールに乗りたいと言ったので、折り返して乗っているという。

 「おねえちゃんもモノレール好き?」

と言って、男の子がキャンディーを一つくれた。こんな出会いとやりとりが嬉しい。対面で座る「ボックスシート」ならではだ。

 「おねえちゃん、見て。」

 男の子が指さした先に海が見えた。緑濃い木々の間から、キラキラと光る湘南の海が見えた。終点で、おばあさんと男の子と別れた。男の子はモノレールを下りてもずっと車体を見ていた。本当に好きなのだなと思った。十四分の小さな旅は、空中をかけぬけ、景色を楽しめる贅沢な時間だったと思う。四季それぞれの違った景色を眺めることができるのも魅力的である。

 今回も私は新聞から、すてきな思い出を作ることができた。情報は、行動や意思決定の重要な判断材料である。ネット時代の今、私は量の多さと早さに任せたくない。じっくりと一つの情報を考え、知識へと換えていきたい。明日もわくわくしながら新聞を広げるだろう。

課題(1)(神奈川新聞 7月9日付)
「湘南の空をかける銀の車両」

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