2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

中学1年生の部 入選

中国の食害事件から僕たちが学ぶべきもの
公文国際学園中等部 一年 篠田 一陽

 七月中旬、米国系食品メーカーOSI傘下の中国の上海福喜食品が、消費期限の過ぎた鶏肉をナゲット等の食品に混入していたことが報道されました。この事件は、上海のテレビ局、東方衛視台の二ヶ月に及ぶ潜入捜査により発覚したものです。他にも期限の過ぎた食品のラベルを張り替えたり、床に落ちた肉を他の食品に混入するなど、上海福喜食品内部での様々な問題行動が撮影され、テレビで報道されました。

 日本マクドナルドとファミリーマートは、この会社から食品を輸入していたため、一部販売中止にしたり、回収、返金する対策を採りました。幸い、日本国内でこの件に関する健康被害は今のところ報告されていないものの、だからといって見過ごすことはできません。僕は、この事件が引き起こした一連の問題と今後の日本のあり方について自分の考えを述べたいと思います。

 冷凍食品の毒物混入事件、肉まん段ボール事件、養殖鰻の化学物質汚染事件など、中国での食品を巡る問題は最近多発しています。日本はその度に影響を受けて大騒ぎ。そもそもこんなに中国に食を依存している事実にも驚かされますが、何度騙されても懲りない僕たち自身に憤りさえ覚えます。

 この件については、早急に対策を講じるべきだと思います。例えば、米国人や日本人の技術者による衛生管理体制を導入してはどうでしょうか。現地の反発が予想されても、OSIなどの親会社の指導や、利用者自身の声を伝える事が必要だと思います。そして何よりも、現地従業員を教育しなければなりません。彼らの衛生観念がしっかりとしていないと、なぜ日本人がいちいち騒ぐのか理解されません。そして、必ずと言っていいほどこのような事件はまた起こってしまいます。これらの対策と並行して、日本国内でも、安全性の高い国産の食材コストを下げる方法を政府・企業に検討してほしいと思います。

 しかし、食害事件は中国だけで起きている事ではないと、どのくらいの人が気づいているでしょうか。食品虚偽表示、食材の使いまわし、これらはすべて日本国内で、しかも一流ブランドを掲げている企業で実際に起こっているのです。そんな日本人が、中国で起きた今回の事件をそんなに非難する事ができるでしょうか。

 「喉もと過ぎれば…」となっている現状を本気で打開するには、企業のみならず、国民一人ひとりが真剣に食の安全に対する意識を高めなければなりません。何よりも、他者のみならず自分たちにも、常に厳しい目を持つことが大切だと考えます。

 ますます国際化の進む現代において、英語と中国語は特に重要だと僕は考えます。それで、小さい頃からその二ヶ国語を勉強してきました。英語は教育機関も教材もたくさんありますが、独学で中国語をマスターするには積極的に中国文化に身を投じなければなりません。テレビの中国語講座を見たり、在日中国人と友達になり、中華街の祭りに参加するなど、自分なりに工夫して中国という国を理解しようと努力してきました。そんな中で起きた今回の事件や、領土問題を巡っての政治的な睨み合いは、僕の中で正直とても悲しい出来事です。マスメディアは相手方を一方的に非難したり、僕たちを扇動したりするのではなく、もっと日本人が反省すべき点にも焦点を当てた報道をすべきだと思います。

 現代では、どの国も多かれ少なかれ他国に食料を依存せざるを得ません。その意味で食の安全はグローバルな問題です。だから世界中の誰もが、外国や異文化を理解しようと努め、皆が安心して食を楽しめる社会を目指すべきだと思います。

課題(1)(朝日新聞7月23日付)
「期限切れ肉 長年使用か」


中学1年生の部 入選

未来をきりひらく
湘南白百合学園中学校 一年 松山 柚香

 あっ、私と一緒?

 「クリスマスおにぎり一個」の見出し。

 私の通っていた幼稚園と小学校では、クリスマスの時期になるとおにぎり弁当の日が設けられます。昼食はおにぎり一個だけ。しかも塩むすびか、中身は梅干しだけが許されます。幼稚園の頃はいつもと違ってなんだか新鮮で、小さかった私にはおにぎり一つだけでも十分でしたが、年を重ねるごとに量も質も物足りなくなり、学校から帰るとお腹がペコペコで苦しい時期に変わりました。でもその経験により、食べられない苦しさを少しだけですが実感でき、この慎みが他の人に幸せを分け与える事になればいいと思って続けてきました。

 しかしこの記事を読み進めると、私のしてきた事と同じではありませんでした。私はお昼だけおにぎり一個。この記事の少女は一日おにぎり一個だけ。しかも世の中がケーキであふれているクリスマスの日にです。

 驚きました。本当に驚きました。

 私の生活しているここは六十九年間戦争がなく、美味しいものがあふれる平和な日本です。そんな日本のこの時代に、電気、ガス、水道まで止められ、食べるものがなくて困っている私と同じ年頃の子供がいるなんて。しかも子供の六人に一人が進学を諦め、満足に食べられない貧困に苦しんでいると記事には書かれていました。

 私は学校や家で機会あるごとに食べるものに困っている世界の人々の話を聞き、両親からも食べ物を粗末にしてはいけない、物を大切にしなさいと教えられてきました。お茶碗にご飯粒一つ残すだけで厳しく叱られた事もあります。自分では贅沢をしているつもりはありませんでした。しかし考えてみれば、私は生まれてから食べるものがなくて困った記憶がありません。また電気がつき、水が出る事はごく当たり前だと思って過ごしてきました。でもこの少女の記事を読み、当たり前だと思ってきた事は決して当たり前ではないのだと改めて気づきました。そして少女からみたらそういう生活を当たり前だと思っていた事が贅沢なのではないか、とも思いました。

 こうやって何不自由なく生活出来る事を、両親や周りの人々に心から感謝をしなければいけないと今強く思っています。それと同時に、世の中には必要の無い事にお金を費やす大人がいて、一見お金が有り余っている様に見えるのに、なぜ生きる事に困っている人を助けてあげられる社会ではないのか疑問に思わずにはいられません。

 この記事をきっかけに家族で随分話し合いました。父から社会主義や資本主義の話を聞きました。税金の事も聞きました。難しい話で私には理解できない事もありました。私にはまだ社会の仕組みを変えるだけの知識も力もありません。だからこそ今は色々な事を吸収して、一生懸命勉強して疑問を解決できるような知識と力を持ちたいと思っています。

 未来はどんな人の前にもひらかれているはずです。これからどんな未来になるかは私たちの努力と行い次第。そう少女にも伝えたいです。

課題(1)(読売新聞 7月30日付)
「クリスマスおにぎり1個」


中学1年生の部 入選

伝え続ける
鎌倉市立第一中学校 一年 岩田 純奈

 いつも当たり前のように食事をとり、学校に行って勉強をして、友達と笑い合ったりする。今まで当たり前のように思っていたことを改めて考えさせる記事だった。

 「あんな時代が、二度と来ませんように」と語るのは当時初年兵だった田村さんだ。

 田村さんは、一人の中国人を銃剣で突くようにと命令されたのだ。そんな状況に置かれた田村さんは何を思ったのだろう。残酷な出来事を実際に目のあたりにしたら、平常心を保つことすらできない、と私は思う。自分がどんなにつらくて、嫌でも、服従しなければいけない。何不自由なく過ごしている私には、その苦しい胸中をうかがい知ることはできない。だが、過酷さを物語る田村さんの言葉が祈りとなって私の胸に響いてくるのだった。

 「あんな時代が二度と来ませんように」

 長崎の原子爆弾の被爆者である森口さんは、当時の様子を語り部として語っている。

 誰にでも、思い出したくない記憶や、忘れたい記憶があるだろう。それは自分が辛くなる出来事や、目を背けたくなるような過去の「事実」だ。だが森口さんはあえて語り続けているのだ。原子爆弾の「事実」を伝えるために。どれだけ悲惨で残酷なものだったかを伝えるために。そしてこんなことが繰り返されないために―。

 森口さんは大きな壁にぶつかった。中学生に「死に損ない」などの暴言を吐かれたのだ。なにがいけないのか、ずっとずっと考えたが心には浮かんでこない。そんな時に、平和運動に関わる男性に言われたのだ。

 「核兵器や戦争がダメというのは正義だが、押しつけられる反発もある」と。

 森口さんは中学生の言葉で、自分の間違いに気付くことができたのだ。少し立ち止まってまた違った視点から見れば、世界は別のものに見えてくるのかもしれない。

 フィリピン・レイテ島で砲兵だった民秋さんはとてつもない飢餓に襲われた。

 民秋さんは米軍の攻撃を受けた。補給は乏しく、空腹が積もっていくばかりだった。少しでも空腹をしのぐためにトカゲやヘビ、野鳥をそのまま食べた。ただただ「死にたくない」という一心で…。いや、「死にたくない」ではないのかもしれない。「生きたい」という民秋さんの意志だ。その意志がメッセージとして私の心に届いた。私は「これが嫌い、あれが嫌い」と安易に口にしていた自分がとても軽率に思えた。改めて食事ができることのありがたみを痛感した。

 私たちの今の国は戦争はしていない。あるひとつの考えに従わないからといって殴られたり、時間を奪われたりした経験も私にはない。自分の意見や考えを自由に表明することも出来る。ましてや、武力によって命を奪われることもない。

 そんな中で私たちはもっと過去の「事実」を知っておくべきだと思う。私は、これまでの戦争を書物や資料でしか知ることが出来ない。毎年、八月になると、戦禍をくぐり抜け懸命に生きてきた方々が高齢化し、戦争の残酷さ、その苦しみを聴くことが難しくなっている、という報道をよく耳にする。時代を担うのは戦争を知らない世代がほとんどだ。そして今までの3人が最後に同じ言葉を口にしている。「伝えていきたい」

 私たちが今、こうして生活が出来ているのは「平和」だからだ。その平和を守るためにも、私は戦争のことを伝え続けていこうと思う。そして私はこう言う。

 「平和は自分たちで作り上げていくものだ。」

課題(1)(朝日新聞 8月16日付)
「いま、さらけ出す戦争」


中学1年生の部 入選

自分から行動すること
横浜共立学園中学校 一年 神津 美帆

 「ミレニアム開発目標(MDGs)の達成状況」という文字に目が留まりました。

 昨年、学校行事でMDGsについて調べてクラス発表してから、世界がどう変わっているかが気になり、新聞をめくる時はいつも関連する記事を探していました。

 MDGsとは、二〇〇〇年の国連ミレニアムサミットで採択されたもので、貧困撲滅など世界でおきている八つの問題を、二〇一五年までに無くそう!という取り組みです。途上国の貧困対策に焦点を絞り、十五年間で達成すべき数値を掲げて、世界各国で改善に向けて取り組んでいます。

 新聞は、あと期限まで一年となったMDGsの達成状況について、国連からの最新状況が一目で分かる絵と表で書かれています。

 見出しは「サハラ以南改善に遅れ」。記事は、国連事務総長特別顧問のアミーナ・モハメッド氏が来日した時に、世界の現状と課題をインタビューした形式です。

 ナイジェリア出身のモハメッド氏が、今年四月に母国でおきたイスラム過激派組織による女子生徒二百人以上の拉致事件について、「基本的には、貧困が背景にある。貧困と無教養が暴力で物事を解決するという行為をエスカレートさせている。」の言葉には強い説得力があります。教育を受けられない→読み書きができず仕事に就けない→収入が少ない→生まれた子どもも教育を受けられない…という負の連鎖によって、怒りが暴力へと向かってしまうのでしょう。しかし、どこかで断ち切らなければいけません。

 これに関係する、まだ積み残された課題の一つ、「初等教育の完全普及」の記事を読んで、すぐに、私にも協力できることがないか調べて、ランドセルをアフガニスタンへ贈る民間の国際援助団体(NGO)のジョイセフの活動を知りました。

 アフガニスタンの子ども達、特に女の子は、家の手伝いや早い結婚のために学校教育を受けられない現実にあります。でも、日本からのランドセルが就学のきっかけになっているそうです。理由として、親の間にも、学校へ通う象徴でもあるランドセルを子どもに背負わせて勉強させたいという気持ちが芽生えたことが大きいそうです。

 私も、次回の回収期間に自分のランドセルを送ろうと決めました。そして、そのことをガールスカウトの集会でも発表して、皆にも協力してもらうように呼びかけました。

 世界の現状や課題はTVのニュースからでも情報は入りますが、耳からの情報は、「なるほど」とその時は思っても次々と新たな音の情報が入ってくるので、じっくり考えることは後回しになります。

 しかし、新聞は自分のペースで理解しながら読めて、考えを深めることが出来ます。

 今回、達成状況を見て、私も何か行動を起こしたいという気持ちになりました。これからも、自分に出来ることは何かを考えながら、新聞を読んでいきたいです。

課題(1)(読売新聞 7月12日)
「サハラ以南 改善に遅れ」

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かながわ「新聞感想文コンクール」事務局
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