2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

中学2年生の部 優秀賞

バナナと人種差別
大磯町立大磯中学校 二年 布川 彩

 私は夏休み中、「星空ロック」という本を読んだ。話の舞台はドイツのベルリンだ。両親が日本から移住してドイツで生まれた少女、トルコから家族で移住してきた少年、そしてタンザニアから養子縁組でドイツ人夫妻にひきとられた少年、彼らがバンドを組み練習していると、ドイツ人男性がにやにや笑いながらバナナの差し入れをした。タンザニア出身の少年はその場から立ち去り、他のメンバーもとても嫌な気持ちになった。主人公である日本から旅行でやって来た少年は、初めバナナの差し入れの何がいけなかったのか理解できなかったのだが、それが「人種差別」というデリケートな問題だと知るのだ。

 この場面を読んで、私はバナナの差し入れをしたドイツ人男性の行為というより、その男性の気持ちに問題があったのだと思った。男性の中にある他の国から移り住んできた人たちに対する見下した気持ちが、彼らを傷つけたのだと思っていた。

 しかし、八月二十三日に行われたサッカーの試合で起きたサポーターによるバナナを振る行為に関する記事を読んで、私は人種差別について認識が甘かったと思い知らされた。「欧州では黒人選手をやゆしてバナナを差し出すのは、サルとみなした悪質な人種差別行為とされる」という記事を読んで、本の中のバナナの差し入れがどういうことだったのか理解できた。「バナナが人種差別の象徴的記号となってしまっている」ことを知った。私はバナナの差し入れをした人の心の中にあった気持ちの問題と捉えてしまったが、バナナを差し入れた行為そのものが問題だったのだ。

 サッカーの試合中バナナを振る行為をした男性は、自分が行った行為がどういう意味を持つのかわかっていたのだろうか。人種差別という意識を持っていたのだろうか。記事を読んだだけでは、この男性の心の中まではわからない。わかることは、プレイしていた外国出身の選手だけでなく、一緒にプレイしていた選手、純粋にサッカーが好きで応援していた観客、その試合に関わったすべての人の心を傷つけてしまったことだ。この問題をメディアを通じて知った多くの人も心を痛めたことだろう。

 今回のバナナによる人種差別行為の以前にも、新聞を読むことによって、ヘイトスピーチによる人種差別、サッカーのサポーターの横断幕による国籍差別、埼玉の専門学校の外国人入学拒否問題などを知ることができた。まずは「知る」ことが大切だと思う。そして知ったことについて考えることだ。考えを深めるために調べることだ。

 私は、バナナを差し出す行為が場合によっては人種差別になってしまう、ということを知った。そしてそのことについて考えた。人は元をたどれば、皆同じ祖先を持つ。私は夏休み国立科学博物館を訪れ、生物の進化についてレポートにまとめた。およそ六百万年前のアフリカで、霊長類の中から人類の祖先が誕生した。最初に現れた人類は猿人で、四百万年にわたってアフリカの中でゆっくり進化を続けた。世界中の現代人はすべて「ホモ・サピエンス」という種に属し、地球上のそれぞれの地の自然環境に適応しながら、進化してきた。それぞれの環境や暮らし方の違いで、体格、肌の色、言語などが多様化してきたが皆同じ人類である。人に差をつけて区別することはおかしなことだ。

 バナナを振った男性に対して無期限入場禁止処分が下った。今後同じような行為が起きないように、厳しい処分も必要なことだと思うが、それだけでは何の解決にもならないだろう。差別とはどういうことなのか、なぜ差別は絶対に許されないことなのか、すべての人が知り考えることが大切だと思う。

課題(1)(毎日新聞 8月25日付)
「バナナ振り人種差別」ほか


中学2年生の部 優秀賞

アイスバケツに思うこと
藤沢市立善行中学校 二年 浅野 維治

 アイス・バケツ・チャレンジが、全世界に広まっている。もともとは、アメリカの若者が始めたこの活動が、ネットを通じ、数々の著名人にまで広まった。では、本来の、難病ALSへの支援という目的も広まったのか?確かに、このチャレンジで、知名度は上がり記事によると、昨年の9倍の寄付金が集まったそうだ。だが、氷水をかぶることだけが、広まっている気がして、素直に受け入れられない。

 まず、なぜ氷水をかぶるのか、が小さな疑問だ。ALSの症状に関連している訳ではないそうだし、本当に、ただ寄付がしたいなら氷水をかぶる必要はないはずだ。そして、水と氷のムダづかいと、罰ゲームのように思えてしまうのだ。だから、本当に寄付をしたいのなら、寄付するだけの方がよっぽど良いのでは?と僕は思う。

 また、指名というのも、ここまで人を集めた作戦でありながら、指名されたら辞められないという脅しになりかけている気もしてしまう。なんとも、指名されたら24時間以内に実行して、再び別の人を指名しなきゃいけないというのも、善意であるはずの寄付の強制や、チェーンメールと同類のものにしてしまっていると思う。

 こう書いて思うのは、上からの指令などで本当に無理矢理やらされる人がいるかもしれないことだ。そうしたら、元は善意のチャレンジが犯罪になってしまう。また、罰ゲームとしてや、今だけのブームとして、ALSさえも一緒に忘れられてしまう気もしてしまう。

 だが、こう批判を続けても、良いことはない。本来は、善意の寄付活動なのだから、今年だけの一過性のブームとして終わらず、ALSが永久的に人々の記憶に残るようになったら、このチャレンジは本当に成功と言えると思う。そして、このチャレンジをきっかけに、他の無数にある難病にも興味を持って、難病や障がいなど全体への理解が進むようになれば、更にすごいことだと思う。

 わざわざ、氷水をかぶったり、強制指名だったりというのが少し引っかかったのだが、そのおかげでここまで広まったというのも確かにある。だから、次は、氷水などの特別なことをしなくても、難病への理解が進むような、そういうチャレンジがあってほしい。

 いや、人任せでも、指名待ちでもなく、自ら、アクションを起こすのだ。それがきっと未来を変えるから。

課題(1)(朝日新聞 8月20日付夕刊)
「氷水かぶって難病支援」

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