2014年 第6回かながわ新聞感想文コンクール

中学3年生の部 入選

シングルマザーの現状
鎌倉女学院中学校 三年 安藤 紗綾乃

 私の紹介する新聞記事は、三月におこったベビーシッター殺害事件をもとに、シングルマザーの育児と仕事の両立、また孤立してしまったシングルマザーの現状、それに対する政府の対策や支援などを説明したものでした。

 なぜこの記事を選んだのかというと、私は前から女性の社会進出、子育てなどに興味があり、子育てと仕事の両立がとても大変なシングルマザーはどのような待遇があるのか、もしくは何の支援もないままなのか、などが気になったからです。また、この事件自体にも興味があったからです。

 私はこの事件の内容を知っているようで全く理解していませんでした。この事件がニュースで報道された時は、赤の他人に子供を預けるなんて理解できない、私なら絶対にしない、など思い、悪いのはそのベビーシッターに預けた母親だ、と決めつけていました。マスコミや記者、アナウンサーまでもが赤の他人に預けた母親が悪いと言い出し、世の中で殺人を犯した男よりも預けた母親が悪いのでは、という感じ方が広まり、今もそれはきっと変わっていません。子供を殺されて悲しみにくれていた母親は、更に傷付いたのです。事件当日、友達同士での遊ぶ約束が無くなり母親は急遽仕事を入れたのです。世間では、母親が子供を置いて遊びに行ってしまった、などの批判の声が上がっていました。私もそうだと思っていました。しかしそれは全然違い、自分の子供に習い事をさせてあげるために貯めようと、子供を思っての事だったのです。子供のために働こう。子供のためにお金を節約するためネットで格安のベビーシッターに預けよう。彼女はやり方が少し違ったといえ、子供の為になるように働いていたのです。それなのにその子供を殺された母親の苦しみは、私の想像でははかりしれないでしょう。お金が無くては生活できません。その子供のためのお金をかせごうとしたのになぜ殺されなくてはならなかったのでしょうか。頼れる人が居なかった母親は一体どうすればよかったのか。私は今の社会の欠点、見えない部分をつきつけられた気がします。

 政治家の一人が、母親が子供を守るのが自然だ、と言っていました。しかし、私の母は子育てをしながらも少しですが働いています。子育ての担当を父親と二分割していこう、とは思いません。しかしそれが、母親が子育てに専念して働くのを諦めなくてはならない理由にはならないと思います。女性の社会進出を今の内閣はかかげていますが、一人で仕事と子育てをしなくてはならない人への対策はしているのでしょうか。これからの時代シングルマザーが増えていき、またこのような事件が起きてから対策を考えていくようでは私は遅いと思います。今回の事件で現代日本のまた新たな問題点が浮き彫りになったのではないかと感じました。

課題(1)(朝日新聞 7月26日付)
「月収5万円 子守誰に頼れば」


中学3年生の部 入選

夏休みに感じた平和
湘南白百合学園中学校 三年 坂爪 莉子

 「りこ!」

 金浦空港の到着ロビーに私の名前が響く。声の主は私の韓国人の友達のヒョンジだった。昨年、韓国の済州島で行われた語学研修に参加した私は、同じ研修に参加していたヒョンジととても仲良くなり、連絡先を交換してこまめに連絡をとっていた。そして、ヒョンジからある一通のメッセージが届いた。

 「りこ、夏休みに韓国においでよ!私がソウルを案内するから!」

 私はヒョンジの誘いを受けて韓国に母と二人で行くことにした。

 笑顔で私に手を振るヒョンジの周りには、優しそうな雰囲気をかもしだす彼女の家族がいた。一通りの挨拶を済ませ、私たちは早速ソウル市内の観光に出かけた。

 ソウルに向かう車中では、ヒョンジの両親が韓国について、様々な事を教えてくれた。私は以前から韓国に興味があり、韓国語を勉強していた為、言っていることは、大抵理解できた。ふと、ヒョンジのお父さんがこんなことを言った。

 「僕は大学生の時、兵役にいったんだけど、あの頃はとても辛かったね。もう戻りたくないね。」

 兵役?そうだ、韓国には二年間兵役に行く義務があるんだ。そんなことを考えていると、次はヒョンジのお母さんがこんなことを言った。

 「韓国では、一年に一回くらい空襲訓練があるのよ。もう馴れたものだけどね。」

 え?空襲訓練に馴れる?!六十九年間も不戦を貫いた国に生まれた母と私は言葉が出ない。ソウル市内を観光している時にも、私たちは日本では見たことがない毒ガスマスクなどがいたる所に設置しており、とても驚いた。とは言え、やはり韓国旅行は一日一日がとても充実していて、一瞬一瞬が最高の瞬間だった。明洞ではたくさんのコスメや洋服も買い、ソウル名物といわれる細長いソフトクリームや日本でいうかき氷、パッピンスなども食べた。それ以外にも東大門、仁寺洞、江南、カロスキルなどにも行き、二泊三泊という短い期間だったがとても楽しく、私は「また来たい!」という気持ちで一杯だった。

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、私が日本に帰国する日になってしまった。

 「ありがとう。日本にも絶対来てね?」

 「うん。もちろんよ!りこと過ごした時間を私は絶対忘れないからね!」

 こうして私はヒョンジたちと別れ、祖国日本へと帰国した。

 家に帰り、ポストの中身をチェックしていた。

 「不戦貫いた六十九年」

 こんなフレーズが私の目に飛び込んできた。ふと私はこんなことを考えた。もし、六十九年もの間、不戦を貫いていなかったら私とヒョンジは出会えていなかったかも知れない。この平和な六十九年があって、私たちの国境を越えた友情が成りたっているのだ、と強く感じる。また、今休戦中の韓国では当たり前の兵役や空襲訓練は、平和国家の日本では考えられないことで、このようなワードが普通に会話に出てくることが怖いことであると私は思う。

 集団的自衛権の行使容認が決まった今だからこそ、兵役や空襲訓練という言葉を世界中の人々が使わなくていい世界にするために何をするべきかを皆で考えるべきではないのか。特に私たちの世代は、日本というアジアを代表する平和国家として、世界に平和を発信する義務があり何かしらの行動を起こすべきだ。

 だから私は国籍を無視し、どの国の人とも仲良くするのだ。だから私は、どの国の人にも親切にする。韓国人にも中国人にもアメリカ人にもカナダ人にも平等に接している。

 私は信じる。この行動がいつか世界平和につながることを。

課題(1)(朝日新聞 8月16日付)
「不戦貫いた69年」


中学3年生の部 入選

少子化と環境
神奈川県立平塚中等教育学校 三年 和田 幸恵

 「よいこは、しずかにあそべます。おおごえでさけばないでね!!」

 アンパンマンのイラストと共に貼られた注意書き。これを見たとき、初めは区が書いた物に見えた。しかしよく見ると書かれている内容は子供の遊びを制限するものだった。公園は子供が遊ぶためにある施設だ。この紙はそこですら思い切り遊んではならないといっているのだ。私はこの貼り紙をはった人になんともいえない怒りがこみあげてきた。確かに子供の声が嫌になることもあると思う。だがアンパンマンはみんなのヒーローだ。ヒーローが子供の数少ない遊び場を奪うだろうか。自分の都合でキャラクターを悪用した人は許せない。区はこの貼り紙をはがさないと言っている。特に問題はないかもしれない。しかしこの事例で他の場所でも同じ様なことが起きるかもしれないのだ。

 また、記事には登校時の校門前の挨拶が近所の住民からの苦情によって自粛されたとも書いてあった。朝、黙礼をして学校に入っていく小学生。この姿を望んでいる大人の気持ちを私は理解できない。「子供は元気が一番。」「家でゲームをしていないで外で遊んできなさい。」と誰もが一度は言われたことのあるセリフではないか。私が幼いころはそう言われると家の前で走り回ったり、公園でもふざけて遊んだりした。そして周りの大人は誰も咎めず優しく見守ってくれていた。しかし、今の子供達は思い切り遊べる場所が激減している。学校、公園、少しずつ自由が失われている。将来思い出したとき、大人に騒音扱いされていた子供時代なんて悲しいと思う。大人の一つ一つの行為が少子高齢化を進める一因になっているのではないかと思う。

 少子高齢化、日本が今抱えている大きな問題だ。社会を支える人材がどんどん減っている。高齢者が増えてくるのは仕方のないことだ。高齢者を少なくすることも、高齢者が働くことにも限界がある。しかし少子化はどうだろう。子供の数が減少することは仕方がないのか。現在子供を持つ世帯は年々減っている。国の予算を見てみると年金・介護などの約一割にも子育て世帯向けの予算は満たない。国の取り組み方も甘いと思った。だが、国家予算より、さっき述べた注意書きのような物が少子化を進めている大きな原因だと思う。自分の大切な子供を邪魔者扱いされたらつらいだろう。これから国の支援が豊かになっても、周りの理解や協力がなければ子供の数は減る一方だと思う。

 子供は宝。いつの時代もこれは変わらない。その宝を日本がたくさん授かるためにも人々は意識を変えなければならないと思う。自分が幼いときに周りの大人に支えられてきたことを、そして将来自分が高齢者になったとき社会を支えているのは子供達なのだということを忘れてはならない。

課題(1)(朝日新聞 8月8日付)
「少子高齢ひずむ国」


中学3年生の部 入選

真珠湾に鎮魂の長岡花火
桐蔭学園中学校 三年 山口 洋平

 なんて美しいのだろうか。この美しい日本の花火が平和と鎮魂を願い、来年の8月15日に真珠湾に咲き誇る。

 太平洋戦争の舞台となったアメリカのハワイ・真珠湾で、終戦から70年となる2015年の8月15日に、日本有数の花火である新潟県長岡市の花火が初めて打ち上げられる見通しとなった。

 長岡市は1945年8月1日にアメリカ軍の空襲を受けた(長岡空襲)。その長岡市とハワイ州ホノルル市の交流は、真珠湾攻撃を指揮した旧日本海軍連合艦隊司令長官・山本五十六が長岡市出身で日米開戦反対論者の知米派だったことから、相互理解を深めるために2007年から始まった。12年には姉妹都市提携を結び、ワイキキ沖で花火を打ち上げた。真珠湾での花火は、来年8月に両方で開く市民交流の記念事業の締めくくりとする計画である。

 双方が戦没者の鎮魂と平和を願い、大輪の花を夏の夜空に咲かせることを、長岡市内で8月2日にあった同市の「日米友好記念事業委員会」で合意した。森民夫・長岡市長は「メッセージを持った花火で平和の大切さを伝えるのは長岡市の責任」と取り組みの意義を強調し、ホノルル市のカーク・コールドウェル市長は「真珠湾で打ち上げる花火は歴史的な出来事となる」と歓迎している。

 69回目の終戦記念日の8月15日、政府主催の全国戦没者追悼式が日本武道館であり、天皇、皇后両陛下や遺族ら約6000人が参列した。安倍晋三首相は式辞で「今日は平和への誓いを新たにする日だ」と終戦記念日の意義を強調しながらも、歴代首相が言及してきたアジア諸国の戦争犠牲者への加害責任や「不戦の誓い」には触れなかった。一方、7月に閣議決定した集団的自衛権の行使容認への言及もしなかった。

 戦後70年の節目を来年に控え、国のかたちが変わりつつある中で、今、問い直す平和としてこの花火は本当に歴史的花火になると思う。両市だけでなく両国間の相互理解のためには、慰霊と平和への想いを同じくする、このような地道な活動が必要だと思う。こうした取り組みこそが積極的な平和主義を体現するものではないだろうか。

 加えて、真珠湾でかつての敵国である日本と共同で花火を打ち上げることができるアメリカ人はえらいと思う。日本人も「ノーモア・ヒロシマ」と言うだけでなく、広島や長崎でアメリカと共同で花火大会をしたらよいと感じる。その是非は別として、この新聞記事を読み、花火に込められた想いに感動した。私は戦争が再び繰り返されることなく、平和がずっと永久に続くことを願う。

課題(1)(毎日新聞 8月14日付)
「真珠湾に鎮魂の長岡花火」

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