神奈川NIEミーティング

NIEミーティング議事録 2014年6月20日(金)

NIE全国センター会議室場所 NIE全国センター会議室
参加者数 28名
司会 大塚仁司(神奈川新聞社)
筆記 藤本健(横浜国立大学院生)
内容
1.参加者による「本日の新聞」紹介
 集団的自衛権、ワールドカップ、エネルギー問題、都議会における女性差別やじ、子どもの自殺の背景、など。
2.本日の報告
報告者:小水亮子先生(横浜市戸部小学校)
3.質疑応答

国語科単元学習と新聞を書く単元

 本実践は、児童の生活経験や成長を中心に行う「単元学習」を意識して行われている。子どもの側に立って実態を基盤にして考えるため、単元に入る前に、子どもたちに新聞を読むかどうかのアンケートをとった。アンケートの結果、ほとんどの子どもが新聞を読まず、新聞をときどき読む子に関してもテレビ欄とスポーツ欄を見る程度にとどまっていたことがわかった。

・新聞をとっていますか・・・・・・はい:16人 いいえ:2人

・新聞は読みますか・・・・・・・・よく読む:2人 ときどき:12人 読まない:2人

 そこで、本実践では、新聞とふれる時間を多く設けるため、総合的な学習の時間と関連させて行い、新聞に興味をもつことから始められるようにした。

◆子どもたちが新聞に興味をもつための工夫

 毎日、新聞を教室に置き、いつでも新聞を読める環境を作ることや、新聞を読む時間を設けるなど。

 新聞に興味をもった子どもは、自分たちで新聞を書きたいと考えるようになり、「地域から題材を見つけ、まちの人に読んでもらい、笑顔になってもらえるような新聞を作る」という目標を立て、新聞を書くことにした。

 単元の展開は、実際の紙面から新聞の書き方を知ることからはじまり、各内容の取材、情報の取捨選択、内容の作成、レイアウト決めと進む。新聞完成後は、T町の人に書いた新聞を実際に読んでもらい、子どもたちの作った新聞に関するアンケートを書いてもらった。

・新聞を読んで笑顔になれましたか・・・はい:96人 いいえ:15人 それ以外:6人

◆アンケートの回答(一部)

・イベントの情報が多かったので、あまり笑顔になれなかった。
・子どもにしか書けないような題材を選んで、書いてくれるともっと笑顔になれる。
・字が読みにくかった。
・新聞の下にある商店街の広告を見て、買い物に行きました。とても目を引く素敵な広告ですね。

 アンケート結果は、記述・構成、そして課題設定に関わるものなど、多岐にわたり、やや厳しい言葉もあったが、子どもたちはほとんど意欲を損なうことなく、もっと本物の新聞に近づけたいという気持ちでさまざまな新聞を読み、参考にするようになっていった。

◆報告者による実践の感想と課題

 評価に関して、「学習活動そのものの価値(態度、習慣を含める)」という点では、多くの子どもが教師から高い評価を受けることになった。子どもの自己評価でも、「地元の方から協力を得て、よい活動ができた」などと肯定的な言葉が見られたが、国語科で育てる学力を身につけたかという部分は不十分だった。本実践では、「単元学習」の理念と自分の実践を比較することで、考えが足りなかった部分や何気なく行ってきたことの価値に気づくことができた。

質疑応答

 質疑応答としては、次のようなやりとりかがあった。なお、質疑応答では話し合いの形式であったため応答者は必ずしも報告ではない。

Q.新聞(1号・2号)を発行したのはいつか。
A.1号は12月、2号は2月に発行した。2号では桜祭りの写真を商店街の方から頂き、内容を時期的に先取りすることができた。

Q.新聞の学習は常に4年生で行われるのか。
A.毎年、子どもたちによって異なる。今回は、ゴールデンウィークに一部の子どもが新聞博物館に行った影響から新聞の学習になった。

Q.新聞に載せる広告についてどのような指導をしたか。
A.何を載せたいか、何回も足を運びたくなるような広告にするにはどうすればいいかを問い、クラスの全員に新聞を書かせて一番何が良いかを考えた。また、新聞を発行する際には校長・副校長のチェックが入り、何度も修正した。

Q.何故、校長・副校長から駄目だとされたのか。
A.文字がきたないことや、学校の名義を使って発行し、人の目に入るからこそ内容がふさわしいかのチェックが入ったため。

Q.何故、T町の人に厳しい意見が寄せられても子どもたちがめげなかったのか。
A.新聞を発行するための資金として商店街の方から4万円を頂いたのだからこそ、と子どもたちが自分たち自身で追い込んでいたため。何を社会にアピールして発信するかについて、強い動機づけが必要であった。

Q.子どもたちの学年が上がった後は、新聞に関わるどのような学習をしたのか。
A.単元をあげての学習は行わなかったものの、普段の授業において新聞に対して抵抗がなかった。

Q.相手を意識して力がついたと子どもたちが自己評価をしなかったのは、聞き方の問題ではなかったのか。
A.子どもたちに対して大きな枠を作って聞いてしまったのだと今では感じる。

Q.新聞によく見られるリード文が、子どもたちの書いた新聞には見られないが何故なのか。
A.子どもたちが小学生新聞や、タウンニュースを基に作成したからではないか。

 以上のようなやりとりがあった。このやりとりの中で印象に残っているのは、大人のチェックにより、子どもたちが社会に何かを出す難しさを感じつつ、大人の世界に近づこうとしているのではないか、という点である。授業での取り組みを第三者に読んでもらうという機会、またその取り組みを大人の目線から指摘されるということはなかなかない。子どもたちには新聞を発行するための資金として4万円を頂いたという責任が、強い動機づけとなったとはいえ、人の良さ、厳しさを感じながら社会に一石を投じたという体験は、子どもたちが授業から社会に視野を広げていく点で、大きな役割を果たしたのではないか。子どもが社会との結び付きを意識していく場として、NIEはあるのではないかと感じている。