神奈川NIEミーティング

NIEミーティング議事録 2016年1月15日(金)

場所 神奈川新聞社
参加者数 21名
司会 望月浩明(神奈川県立有馬高等学校)
記録 鈴木洋平(横浜国立大学大学院)
内容1 参加者による「本日の新聞」紹介
衆院議員定数の削減、従軍慰安婦への発言、海老名市減災への取組、スキーバス転落事故
内容2 本日の報告
報告者 細野友貴(横浜市立鶴見小学校)

報告「新聞スピーチ」

【学習のながれ】

本実践は、朝の会で5年生を対象に実施している。日直の二人は、教室に置いてある新聞や家の新聞から記事を選び、新聞ノートを作成する。そして、選んだ記事の内容や感想を発表する。また、選んだ記事に写真がある場合は、実物投影機でテレビに映しながら話す。

発表後、教師は、記事の選び方や意見の話し方、記事の内容について補足を行う。

【教師が伝えていること】

日直に対して…選んだ記事の新聞社、いつの記事なのか、記事の簡単な紹介、記事について思ったことを発表するよう伝えている。

次の日直に対して…発表記事についての感想や質問を話すよう伝えている。

日直以外の児童に対して…思ったことや考えたことがあれば話すよう伝えている。

【児童の様子】

・テニスが好きならテニスなど、視点を持って記事集めをしている。

・自分が体験した事、テレビで見たことを関連付けて新聞ノート書いている。

・記事に関連する写真を撮ってくる。

・児童にとって身近で、関心のある記事を選んでくる。

【教師が感じている課題】

・新聞記事の内容が理解できないまま紹介している。

・難しい記事を選んでしまう。

・「すごいな」、「こわいな」など、考えたことが一言でおわってしまう。

【児童が選んだ記事】

・岡崎16位「魔物は自分の中に」、冬の嵐 列島襲う、照ノ富士けがの不安残す、米 反イスラムの嵐

・京の華 満開列車、英王子夫妻自身追悼、ホッケー女子「リオでメダル」「円、無効1カ月117〜123円」

・なでしこ4強、仏・米・ロ ISを空爆

・又吉「火花」芥川賞候補に独特表現、高校生手話大会佳子さまご臨席、「ただいま」V真央、無敵の強さ羽生陰陽師、箱根の神様ありがとう神野 ※全て日刊スポーツ

・錦織 自画自賛の8強、流行語ノミネート、暖かい仕事始め

報告に対する質疑応答

Q、鶴見小学校は外国籍の児童が多いのか?
報告者:少ない。
質問者:鶴見の総合高校では、外国人クラスがある。そんななかで新聞をつかうことは難しいと思った。
Q、一分間スピーチとしてやるのか、新聞紹介としてやるのか?
報告者:型は決まっていなくて、時間数も決まっていない。どちらかというと紹介。
質問者:授業で使うときは、動物、食べ物、スポーツの食いつきがよい。共通の話題が出るからいい。
参加者:児童は、野球、相撲、ホッケーといったスポーツには目がいっている。
Q、次に人が感想を話すというきまりであるが、自由に感想を言う児童は?次の日直は話せる?
報告者:少ない。自分たちが知っている話題だと結構盛り上がる。
「中国 着々と人工島」の話をした児童が「中国ずるい」といった。国土の勉強から日本も埋め立てていることを思い出した児童が、こんなことあったと言って、みんなでもう一度資料集をみることもあった。そういうことから、広がっていくことがあった。
Q、記事にスコットランド、アフガン、リオという地名が出た時に、児童は想像つく?
報告者:多分ほとんどがついていない。
参加者:周りに国旗が書いてある世界地図で確認できるといい。記事のなかで紹介できるといい。
Q、このスピーチの活動はどのくらいしている?スピーチを始めたばかりの児童の様子と今の児童の様子で変化してきていることは?
報告者:はじめたのが5月。そこからほぼ毎日おこなっている。新聞の見出しの丸つけをきっかけに行っている。最初のころとの違いは、最初は読むことでいっぱいいっぱいだったが、少しずつ工夫できたりだとか、聞き手のことを意識するようになってきている児童がいる。
Q、なかなか難しい子に対する支援や助言は?
報告者:心配だったらどんどんおいでと言って、朝の会まで時間があるので、その時に心配な子は「これなんですか?」と聞いてくる。多くの子は、お家の人に聞いていると思う。読み込んでいなくて、質問されてわかりませんという児童はいる。
Q、新聞は手に入る環境か?
報告者:家ではほとんどとっていない。二社か三社くらいいただいているので、それを置いておく。その日の分は読めなくなるので、それ以降の新聞は切り取りしていいよと。
参加者:無理する必要もないし、自然に子どもたちの顔をみながらやればいいと思う。小学生の実態は、こういうことなので、自然のことではないか。
これだけ多くのことを書いているということは、子どもたちが社会と出会っていること。わからなくてもいいから、なんかしゃべる。大人も分からないなりにしゃべっている。なんで円高、なんで株安なのとわからないうちに、ああでもないこうでもないと話しているうちに分かってくる。緊張しないで、緩やかにやっていくと、時間が経つとより明快に要約ができるとか、自分の意見が言えるとか、子どもたちの好奇心とか、これから生きていくうえで情報社会との出会いを重視すればいい。学力はどうのという必要もない。
この子たちは、一年たつと変わると思う。社会との出会いが大事で、いつの間にか社会の中で、自分がどこに住んで、どこに立って、どこで呼吸しているのかをざっくりつかんでいくことが大事ではないかと。学力とは関係なくそういうことが大事。
参加者:こんなにいろんなバラエティに富んだものを選んで言えるっていうのはクラスの雰囲気、空気がいいのか。記事を読んだ子、聞いた子が次の日のテレビニュースで、あれはああだった、こうだったと言える姿勢が育てば、長い目で見て思考力が養えるのでは。
Q、みんなの前で一人で発表するのは、やりたくないのでは?
報告者:朝の集会でできないときは、先生いつやるのと聞いてくる子が何人かいる。やりたくないわけではない。一言も言えない子はいない。
質問者:みんなの前で記事を紹介するのは負荷がかかっていると思う。これをもう少し、ハードルを下げてあげた方がいいと思う。そのためには、グループで三人か四人に選んだ記事を聞いてもらうと、気持ちが楽になるのではないか。
選んだ記事をみんなで分類してみてはどうか。これは災害だとか、これはスポーツだとか。そういうふうにしてやってみると、見えてくるものがある。聞いたけど、さっぱり分かんないといったものを整理するとか。もう少しみんなでいじくってみたらいいと思う。
報告者:ほとんどの子が無自覚に新聞記事を集めていると思う。
質問者:発表した児童が自分のノートに貼るだけでなく、選んだ記事をみんなのものにする手立てを。台紙に張って、その子にはコピーして渡して。教室の後ろに貼ってあげたりしたら、共有のものになるのではないか。
参加者:私は、記事を壁に貼っておいて、自分で好きなように動かしてごらんということをしていた。分類していって、このテーマでまとめてみようというものだけ抜いて刷新していた。好きなものをどんどん集めていく、ほぐしてばらして、一つのテーマで集めてみて、温暖化のものだけ集めてみたりした。動かせるものとか、みんなに見せられるものとか。慣れないと、急にやれっていったら負担になるので、あまり強要してはいけないが。
参加者:中学で新聞を使った実践をしているが、選んでくる記事をきちんと読み込んで、説明することができない。小学校でこのような積み上げができていると、中学生で新聞への抵抗がなくなるのでは。繰り返し、繰り返しが大事。
参加者:先生が先程ちらっとおっしゃった、家で家庭の人と話したということがチャンス、そういうことが広がっていけばなと。家で、親御さんが応えてくれるような環境になればいいなと。子どもは自分のこととして社会の事をなかなか考えられない。
参加者:これをなんでやるかということを我々も考えなければいけない。私は子ども理解だと思う。子ども一般としてではなくて、Aちゃん、Bちゃんのことを考えていくっていうことを他の授業とつなげながらノートを読んでいく。そのことを通して、教師の授業力がアップしていかなければならない。NIEだから新聞を使わなければいけないと万勉だらりとやるのではなくて、われわれにとっては、どういう意味があるのかと、自問自答しながらやらなきゃいけない。夏休み前までは、どうにか好きなようにやってもらう、夏休み明けになったら、少しハードルを上げて、仕掛けをかえてみるとか。そういうことを通して、飽きないようにする必要がある。
子どもにとって新聞を使う学習は、生活教育だと思っている。新聞を眺めることによって、世の中について学ぶということが、空気を吸うようにあったらいいなと。今空気を一生懸命吸い込まないと吸えないような状態かもしれないが、その入り口だと思ってやってみると、やりがいがあるのではないか。そうしないと、教師の方の気持ちが萎えてしまう。めあてを明確にした方がいいと思う。

 以上のようなやりとりがあった。

 ただ授業に新聞を用いることがNIEではないだろう。なぜ新聞を使うのか、新聞を使うことで児童の何を理解し、何を育てたいのかといった問いを持ちながら実践する。実践後、児童の発言、しぐさ、感想から自身の問い振り返り、新たな問いを生みだしていく。新聞を使って自由に動く児童たちからは、教師のねらいに即さずとも新たな発見があるだろう。