神奈川NIEミーティング

NIEミーティング記録 2017年6月16日(金)

発表 神奈川県立上溝高等学校
発表者は発 参加者は参 で表記
出席者数21名

自己紹介および今日の新聞記事を使った実践アイデア紹介 (出席者全員)

発表
実践校2年目に当たってこれまでの取り組みについて成果と課題が提示された。

1 公民科と国語科での取り組み

(1)公民科での実践

 「現代社会」では「とにかく新聞を読む時間」を設けた。テスト返却時の残りの時間約30分を利用した。普段の授業では眠ってしまう生徒もいるが、この時間ではほとんどの生徒が集中して読んでいた。生徒の感想でも「強制的に読まされるのは貴重な時間であった」「新聞をすべて読む必要がないこと、新聞の読み方がなんとなくわかった」などが見られた。生徒達が社会のことに関心を寄せている姿に発表者自身が「ホッとした」体験であった。

 「政治経済」では昨年度は「高校生ビジネス・グランプリ」と関連づけて新聞を活用し、本年度は生徒によるニュース発表に取り組み始めた。「高校生ビジネスグランプリ」では今、社会で困っていることを新聞から探し、その解決策を考えさせた。生徒の多くは特に女子生徒が少子化や高齢化、子育て問題、老人問題に注目した。それは発表者にとって、生徒達がどんなことに関心を持つのかについて知った体験であった。ただ男子生徒の関心がスポーツなどに向けられていて、社会的な関心のありようがまだつかめていないとの課題を述べられた。

 生徒によるニュース発表として、授業冒頭の5分間に気になるニュース調べを発表させている。その際に新聞記事をスクラップさせ資料としてまとめさせている。まだ始めて1ヶ月ほどなので今後、詳細な報告をしたいと述べられた。

(2)国語科での実践

 同高の国語科教員にもNIEに取り組んでもらった実践である。小論文作成に向けて、ディベートに取り組み、その際に新聞を使った調べ学習をグループごとに行わせた。「ふるさと納税は地域活性化するか」「東京オリンピック開催の是非」などをテーマに設定した。しかし、どちらのテーマでも、批判的な記事が多かったために、肯定派グループはディベートでの立論や反論に苦慮していた。新聞記事以外の資料にも当たらせる必要があった。

(3)成果と課題

 成果としては、多くの生徒にとって新聞を授業に持ち込むことはその視野の広がりとニュースへの関心をもたらしたことが挙げられる。

 課題として、次の2つが挙げられる。

 まず、公民科では、現代の諸課題であればあるほど、その取り扱いは公正さが求められるという課題である。次の課題は新聞記事がややキャッチーなものが多いため、生徒は刺激的なデータや事例に引っ張られすぎてしまうことである。これは新聞以外の資料を活用することで解決できるのだが。

2 意見交流

○「とにかく新聞を読む時間」を巡って
参:テスト返却の残り時間を活用しており、無理に新聞を使おうとしていない点に賛成である。
参:どういう観点でどのような記事を与えというように、テーマを絞った指導が必要ではないか。
参:私は新聞を丸ごとというのが良いと思う。記事を切り取って授業に持ち込んでも、それは教材になってしまう。新聞記事ではなくなる。
発:「現代社会の授業ではジャンダー、出生前診断などを取り上げている。『とにかく新聞を読む時間』では、生徒がどこにひっかるかを知りたかった。また、生徒は自分の関心であるので、その後、調べていくと考えた」
参:先ほど現代の諸問題を取り扱う際の中立・公正さについて課題として出されていたが、その視点としてESDもあるかと思う。また昨今、注目されてきているLTGBを取り上げることでも、「中立・公正」を担保しやすいのではないか。
参:英語の教科書や国語の評論文から広げてはどうだろうか。
○「高校ビジネス・グランプリ」を巡って
参:高校ビジネス・グランプリとは何ですか?
発:「日本政策金融公庫主催で、高校生ならではの自由で創造力を発揮した新サービスや新商品などのビジネスプランを提案してもらう企画です」
参:大学生でも、レポートでこれこれの社会問題があり、その解決策としてビジネスボデルを提示してくる者がいる。その解決策はどのような方にとって有益か、そうでない方にとってどうか、その方にはどのような解決策があるかなどを指導している。が、その解決策が有効に働く方の具体的な現状のありようにピントこさせるのが難しい。発表者はその指導をどうされたのか。
発:「今の社会で困っている人がいる。その解決策がビジネスボデルになるかどうか分からないけど、考えて見ようと問いかけることから始めた。困っている人を新聞で調べさせた。生徒たちは過疎の問題を取り上げることが多かった。指導ではターゲットを絞っていくようにした。そこから解決策を考えさせた。さらにターゲットを広げることは確かに難しかった。
○「成果と課題」について
・「新聞のデータに引っ張られる」とはどういうことか?
発:例えば、今日の神奈川新聞で言えば、認知症不明者1.5万人 前年比26%増という数字に対して、『問題だ』『すごく多い』となる。認知症の方が全部で何人いて、などに目を向けることがなかなか難しい。
参:新聞は関心・考えることのきっかけを与えるように書かれている。生徒に調べさせていくことが必要ではないか。