神奈川NIEミーティング

NIEミーティング議事録 2015年9月18日(金)

場所 神奈川新聞社
参加者数 20名
司会 萩原秀文(横浜国立大学大学院院生)
記録 志田拓哉(横浜国立大学大学院院生)
内容
1.参加者による「本日の新聞」紹介
安全保障関連法案、デモについて、18歳以上に選挙権など
2.本日の報告
報告者:臼井淑子(NIEアドバイザー)
報告 NIE全国大会(秋田大会報告)

テーマ
「問い」を育てるNIE 〜思考を深め、発信する子どもたち〜

【内容】

@記念講演・基調講演について

 「『今を生きる力』を育てる新聞」というテーマで、法政大学教授の尾木直樹氏による記念講演が行われた。尾木氏は自らの実践を紹介しながら、情報活用力、クリティカルシンキングを育てるために、新聞を上手に使ってほしいと話した。

 基調講演では秋田大学教授の阿部昇氏が「新聞と教育の緊密なかかわりは必然―21世紀型学力と民主主義」というテーマで講演した。NIEが21世紀型学力を育てるという視点と民主主義を守り発展させる主権者教育でNIEが必要であるという2つの視点から新聞と教育は互いに重要な意味を持ち、「問い」を生むNIEが厳しい読者を育てることとなり、新聞の質を保証しレベルアップさせることにもつながると話していた。

A特別分科会について

 奈良女子大学附属中等教育学校教諭の二田貴弘氏によるSkypeで沖縄の新聞記者へのインタビューや新聞社のデジタルコンテンツ・SNSを生かした模擬授業が紹介された。デジタルコンテンツを生かすと、効率の良い情報集め、情報の共有化、情報量、デジタルレイアウトなどデジタルならではの利点があり、スキルの育成や向上、涵養を目指すとともに新たなNIEのあり方の模索が提案された。

B公開授業について

 報告者が見ることができた公開授業のポイントについてまとめる。

・秋田市立東小学校6年社会「江戸幕府と政治の安定〜われら歴史新聞社[鎖国編]」
歴史新聞作りで当時の人々の立場や今を生きる自分との関わりを考えて製作する。
・秋田大学教育文化学部附属小学校5年国語「新聞を比べて読む〜サッカー女子W杯・初戦」
M社とA社の新聞の本文・見出し・写真を観点にした比べ読み。記者の伝えたかったことを議論する
・横手市立朝倉小学校6年総合「ドリームプロジェクト〜将来の秋田を考えよう〜」
NIEタイムでの新聞読書。新聞資料を課題発見・調べ学習・思考を深めるのに用い、キャリア教育の視点も取り入れる。
・由利本荘市立由利中学校3年外国語「ふるさと由利を走るおばこ号」
英字と邦字の新聞読み比べ→調査活動(記者に取材方法を学ぶ・インタビュー)→PCで英文レポート(見出し付け等)→英字新聞政策→発表

【質疑応答・感想】

Qタブレットで新聞社のコンテンツを使うと閉ざされた情報になってしまうのではないか。
・加工される前の生の情報に触れさせることも大切だと感じる。(図書館の利用などで)
Q秋田の学力が高いのはなぜか。
・教材研究を校内又は小中の教員が一緒になって行っている。
・学力向上のためのNIEということではなく、自分と社会とのかかわりの中で自分について考えることが学力向上につながっている。
・低い学力の生徒に対して丁寧に指導しているのではないか。
⇒小学校・家庭から積み上げているのではないか。
⇒○×ではない、答えのない問いを投げかけ、対話し続けているのではないか。
⇒丁寧な指導とは何か?先生がどんなふうに新聞を生徒に位置づけさせているかという視点を持ちながら授業を観察することが重要である。
感想
見出しをつける授業で、最後に新聞社がつけた見出しを見せていたが、生徒は自分たちのつけた見出しに自信を持っていた。
感想
NIEにおいてもやさしいことから着実にやらせて、1つ1つできた印象を持たせることが重要ではないかと感じた。

 以上のようなやりとりがあった。

 秋田大会のテーマにもあるように、NIEの目的は今日的な課題に対して生徒一人一人が問いを立てられるように新聞を授業の中で活用することが挙げられる。活用の方法は公開授業の中で示されたように新聞作りや、比べ読み、デジタルコンテンツの利用などが提案されている。

 しかし今回の報告では、当然のことながら、生徒が授業を受けた後に新聞に対してどんな印象を持ったかについては触れられていない。重要なのは、NIEの授業を生徒がどのように受け止めたかではないかと感じる。

 生徒が解決すべき問題に対して新聞を活用する必要性を生徒自身が感じなければ、新聞を重要な情報源として認識し、判断の根拠として新聞が根付くことはないのではないかと感じる。

 新聞の必要性を生徒に感じさせるためにも、「どの授業」の「どんな場面」で「どんな資料」を生徒に提示するかさらに追及していかなければならないことを再確認させられた。