神奈川NIEミーティング

NIEミーティング議事録 2014年12月19日(金)

場所 NIE全国センター会議室
参加者数 25名
司会 鎗分達文(神奈川新聞社)
記録 萩原秀文(横浜国立大学大学院生)
内容
1.参加者による「本日の新聞」紹介
国交正常化に向かうアメリカとキューバ、爆弾低気圧による大雪、甲状腺検査見直し提言、神奈川県市長一年を振り返って、水素ステーションの設置、朝日新聞投書 投票率について、STAP細胞検証実験終了、大学入試センター試験に変わる入試を、パキスタン学校襲撃、製菓店副社長の話、ドラゴンズ大島、衆議院選挙投票率、など。
2.本日の報告
@報告者:太田智弘先生(横浜市立田浦小学校)
6年生国語科「平和について考える」
A報告者:藤沼総輔先生(神奈川県光陵高等学校)
3.質疑応答

実践の報告

@報告者:太田智弘先生(横浜市立田浦小学校)

 横浜市立田浦小学校6年生の子どもたちのうち、ほぼ半数の子が新聞を家庭で購読していた。そして、多くの子どもたちが新聞の良さについて気が付いている。また、日常的な取り組みとして新聞スクラップ、朝の一分間スピーチ、読売ワークシートを行っている。

6年生国語科「平和について考える」

 亡くなった方や残された家族といった人にクローズアップした実践になっている。まず、先生が事前に選んでいた3つの読売新聞の記事から子どもたちに記事を選ばせた。次にその記事を読み、最後に作文を書いた。作文は先生自身が作成したモデル文を参考にさせた。

A報告者:藤沼総輔先生(神奈川県光陵高等学校)

 光陵高校では、NIE実践校の指定を受ける前からNIE活動が各教科・科目ごとにおいて継続的に行われてきた。しかし、それらは教師個人としての取り組みであり、組織的な取り組みへと変えていくことが課題としてあげられていた。NIE実践校の指定を受けてからは、組織的にNIE活動を取り入れていくことが求められるようになったが、研究指定や本校のもつ特色的な取り組みとNIE活動をどのように調和させていくかが大きな課題となっている。

(1)国語総合におけるNIE

 1学年の必修科目である国語総合で「新聞記事を使ったスピーチ」という単元を設けた。生徒一人ひとりにランダムに新聞を配り(一回まで交換可)、その中から自分がスピーチする記事を選び、@記事の要約、A自分の知識や調べたことから補足する事項、B自分の意見をまとめて、メモし、そのメモをもとに1分半以内でスピーチする。

(2)地理科目(地理A・地理B)におけるNIE実践

 1学年の必修地理Aと3学年の選択地理Bの授業において行う。地理科目の学習単元などに合わせて、生徒に読ませたい新聞記事を切り抜いてプリントを作成し、「本日のNIE」と称して毎回の授業の最初に配布、授業の導入としている。国際関係の記事が中心になるが自然災害や環境問題などの記事も扱い、授業のねらいに合った内容となるように心掛けている。生徒に一通り読ませた後は、どんな内容か・記事の核心とは何かといった「基軸となる問い」を織り交ぜながら、生徒との対話の中で確認していく。生徒による授業評価でも「家でその内容について父と議論していて、面白いです」などと学習意欲の深まりに関するコメントが多く寄せられた。

 アンケート結果:「本日のNIE」は役立っている
かなりあてはまる40.5%
ほぼあてはまる47.4%
あまりあてはまらない10.2%
ほとんどあてはまらない1.8%

(3)メディア・スタディーズ(研究開発学校実践科目)におけるNIE実践

 「メディア・スタディーズ」は、「現代社会が抱える諸課題について、メディアの適切なあり方と言う視点から、情報を分析、熟考、評価し、適切に表現することにより、課題を解決する能力や態度を育む。」という目標を掲げた研究開発科目で、光陵高校1学年の必修科目になっている。新聞、テレビ、インターネットという情報メディアのそれぞれの特徴を考えたあと、同じ題材を同じ日に報じた新聞記事に、報じ方の違いがあることを学習する。

 読みとるときは、@新聞の何面で報じているか、A記事の分量はどのくらいか、B記事がどのような立場で書かれているか、C複数の人物や事柄を一緒に報じている場合、その報じ方に偏りがあるか、D社説にその内容が触れられている場合、どのような意見が述べられているか、という点に注意させている。

(4)学年・学級における実践

 進路実現の時期にある3学年に資する取り組みとして、3学年廊下側に壁貼り新聞でのNIE活動に取り組んでいる。選択授業で教室移動の多い3年生は、教室が空くまで廊下で待つことがしばしばある。そんなときにこの壁貼り新聞に視線を向けてくれているとのことである。記事の内容・テーマはいずれも、地理Bの授業に合わせてセレクトしたものであるが、新聞を読むきっかけになることを願い、今後に向けては複数の新聞社の同じ事件を扱った記事の読み比べができるようなコーナーを用意することを検討している。

 また、報告者個人ではその日の新聞に掲載された記事を縮小コピーして貼付した学級日誌でのNIE活動や、数社の新聞を用意したNIEコーナーを設けるなどの活動も行っている。

(5)NIE実践校としての次年度に向けた課題

 実践校に指定されてから日が浅く、色々な実践を試している段階であるため、次への展開として平成26年度の実践を振り返り、生徒の学びの変容の把握、実践の成果などをとりまとめ、次年度への展望を見極める。また、今年度の取り組みを受けて、NIE実践校としてのグランドデザインの作成を行い、他教科等を含めた実践の拡充を具体化することをめざす。

質疑応答

 質疑応答としては、次のようなやりとりがあった。なお、質疑応答では話し合いの形式であったため応答者は必ずしも報告者ではない。

@の報告について(太田智弘先生)

Q.作文のモデル文について詳しく教えてほしい。

A.モデル文を使うのは有効であったと考えている。記事のなかのかぎ括弧に特に着目させて作文を書かせた。

・この時期の子どもは文を「〜と思いました」でつなげてしまいがちだが資料として持ってきた子どもはそれ以外の言葉でつなげている。それは先生の指導の成果といえる。

・これを分析するためにはすべての生徒が書いた作品を見る必要があるのではないだろうか。先生のために作文を書いたのかそれとも指導の成果なのかを分析する必要性もあるだろう。

Q.今回の実践では積み重ねをどのように考えているか。

A.この一回の実践ではなく毎日の積み重ねによって子どもたちを育んでいくことが重要である。

A.子どもは教えられることで語彙が増え、それが正しい形で使えるようになっていくのだろう。

Q.新聞社は一社だけであったか。

Q.この平和という思い問題に対しては数社を比べてみることが必要だったのではないだろうか。

Aの報告について(藤沼総輔先生)

Q.実践「本日のNIE」の記事は子どもたち自身が見つけてくるのか、それとも教師が提示したものなのか。

A.教師が提示。社会的に大きな意義があるものを取り上げる。

Q.NIEの実践を行う上で時間数のプレッシャーがあるはずだが、どのように時間を確保しているのか。

A.生徒たちにNIEを通して思考力をつけようと考えると、生徒たちの活動が必要となる。しかし、活動を取り入れることでかなり時間がかかってしまうため、そのジレンマに悩んでいる。

Q.「基軸となる問い」を立てると報告していたが、どのような発問なのか。

A. 例えば、この記事を取り上げることによってある国を概観できるような、単元を俯瞰する問いを立てる。このことでまず問題を押さえさせることを意識している。

Q.「生徒たちの対話」と報告していたが、それは生徒と授業者の対話についてか、それとも生徒同士の対話なのか。

A.授業者による。報告者は、3・4人のグループを作ることで生徒同士が記事について話せるようにしている。どういった形の実践だと全員が参加できるのかを意識している。

Q.今後、貴校ではどのような実践を行う予定か。

A.生徒と生徒の親で話すことが少ないという課題を本校では抱えているため、生徒と生徒の親が話したくなるような実践を行いたい。ただ、こういった会話が難しい家庭もあるため家族で話す、考えるということが妥当なのかについては改めて検討したい。

Q.10月に実践が集中していたが、何故この時期に多くの実践が行われたのか。

A.本校では年度初めに年間計画を冊子にして生徒たちに提示している。この年間計画に沿って実践が行われていくため10月に集中することとなった。なので、選挙の時期とは関係がない。今後の課題としては、10月だけに集中して行うのではなく、年間計画を動的に動かしていけるようにしたい。

まとめにかえて

 以上のようなやりとりがあった。今回の実践では新聞による学習を積み重ねていくということが一つの論点であったように思われる。子どもは先生に教えられて語彙を学んでいく。はじめはちぐはぐな使い方でもだんだん使えるようになっていく。大人と同じような新聞は小学生にとっては難しいところも多いだろう。しかし、その活動を積み重ねていくことによって、読めなかった文字や意味が分かりにくかった文章が理解できるようになったとき、子どもは実感としてそれを感じることができるのではないだろうか。これも一つの新聞の楽しみ方であり、魅力なのではないかと思った。