神奈川NIEミーティング

NIEミーティング議事録 2014年9月19日(金)

NIE全国センター会議室場所 NIE全国センター会議室
参加者数 20名
司会 鎗分逹文
記録 山口満
内容
1.参加者による「本日の新聞」紹介
東大卒公認会計士ボクサー、外国人介護福祉士、スコットランド住民投票、ID交換後の被害倍増(SNSの問題)、地価の上昇、外来生物、富士山の入山料、4コマ漫画、など
2.本日の報告 第19回NIE全国大会徳島大会から
報告@ 金子幹夫先生(神奈川県立平塚農業高校 初声分校)
「苅谷剛彦氏による記念講演の報告」
報告A 近藤智弘先生(横浜国立大学教育人間科学部附属鎌倉中学校)
「鳴門教育大学附属中学校 公開授業報告」

(1)第19回NIE全国大会徳島大会の報告及び質疑応答

報告@「苅谷剛彦氏による記念講演の報告」〜有権者の育成におけるメディアの役割を考える〜

 次代の有権者を育てるにあたり、ジャーナリズムが果たす役割と教育の使命に関する講演が行われた。

 講演は、イギリスのシビライゼーションの起こりと日本のシビライゼーションの起こりを比較検討から始まった。まず、欧米とは異なり国家と市民との緊張関係がないままに文明開化が進んだ日本において、正しい選択ができる有権者をどのように育てるか課題であるとの総括があった。次に、ジャーナリズムの役割や教育の使命については、賢い判断をするために教育がつくりだす知識の基盤が必要であり、日々の情報を発信する優れたメディアが求められ、優れたメディアは優れたジャーナリズムから生まれ、優れたジャーナリズムは優れた読者の存在が必要であるとされた。そして、教育をする者は、自分たちが見ている世界はメディアによる枠組みであることを自覚し、それを相対化したうえで、子どもたちへの指導が求められているというのである。

<質疑応答>

Q.正しい判断、賢い選択とはなんだろうか。

A.社会科には主権者を育てるという大きな使命があるが、それすらも狭められている現状がある。
 日本人はすべて日本語に直して考えるが、例えば、インドネシアでは教科書はインドネシア語で書かれているが授業は英語、というように、最近伸びている国は英語を使っている。
 英語教育に限らず、世の中ではグローバル化という一つの道に集約していってしまう流れがあるが、そうではない道もあるのではないか。その道を示せないだろうか。
 大学でも英語での授業が国策のように推進されている。それに対峙する思想がないことが問題である。

A.質問にあえて答えるならば、判断するにあたっての思考の枠組みをたくさん用意してあげることが、主権者を育てることになるのではないか。

A.何が「正しいか」という議論は教師の発想から抜け出ていないのではないか。判断するまでに考えるという行為が大切であり、これが「正しい」からということで考えるという行為が大切。これが「正しい」からということで枠の中で答えを出させてしまってはいけないのではないか。

報告A 「徳島未来構想」−模擬県議会を開こう− 〜新聞をデータベースとして活用する試み〜

 鳴門教育大学附属中学校における総合的な学習の取り組み
 1年 フィールドワークの仕方や資料のまとめ方などの習得
 2年 環境と国際化の2領域について課題解決学習
 3年 3年生全員による模擬県議会の開催及び提言のまとめ

 公開された内容は、3年生全員による模擬県議会の開催であった。前時までにクラス毎に政党が結成され、政党の中に10の委員会を設置し、委員会ごとに議会に提出する議案書と質問書の作成が行われていた。それを基に、議会を通じて、徳島の現状と課題を理解する場面であった。

<質疑応答>

Q 新聞からの情報に制限した理由は何であったのか。フィールドワークによる情報などを反映させた方がよかったのではないか。統計が必要であれば、役所が示している情報の方がよいのではないか。

Q どのデータが客観的かについての判断は難しいところがある。大切なのは出典をはっきりさせておくことではないか。国のデータであってもおかしな場合はある。

(2)まとめにかえて

 以上のようなやりとりがあった。その中で印象に残っているものは、これが「正しい」からということで枠の中で答えを出させてしまってはいけないのではないか、という点である。自分が見ている枠組みは、メディアによって作り出されていることを自覚し、相対化することに意識を向けられるようになることで、考えるという行為の自由度が高まる。NIEを通じてメディアとの関わりを絶えず意識することによって、子どもの思考を無意識的に枠にはめてしまうことを控える一助になるのではないかと感じた。