神奈川NIEミーティング

NIEミーティング議事録 2015年4月17日(金)

NIE全国センター会議室場所 NIE全国センター会議室
参加者数 18名
司会 臼井淑子(NIEアドバイザー)
記録 鈴木洋平(横浜国立大学大学院院生)
内容
1.参加者による「本日の新聞」紹介
夏の電力安定供給、新聞の活用術、子ども交流サイト被害最多、中国の日本人学校で教科書の到着遅れ、新聞小説、ゆるせない仮面の教育者など
2.本日の報告
報告者:村山正子(相模原市立鵜野森中学校)

報告「多様な情報メディアの活用の中のNIE」

(1)「生きて動いている社会を実感 〜校外学習・地域学習には新聞も〜」

【学習にあたり】

 校外学習や地域学習では、その土地の歴史や文化を図書館で調べることが多い。鵜野森中学校では、京都へ修学旅行に行く前に、生徒たちは平安時代の京都の様子についての調べ学習を行った。このこともあってか、多くの生徒たちの抱く京都へのイメージは、寺社や古い街並みといった「過去のもの」であった。

 しかし、実際行ってみると、生徒たちは、寺ばかりではなく、近代的なビルがあることに気付き、驚くこともあった。もし修学旅行へ行く前の調べ学習で、新聞を活用したなら、「京都の街は、街並み保護条例でせめぎ合っている」といった京都の様子を捉えることにも繋がったかもしれない。

 校外学習のための調べ学習で、新聞を活用することによって、生徒たちは、実際に生きている、動いている社会を感じ取ることができるのではないか。また、図書資料と新聞を組み合わせることで、校外学習が、より広がりや実感のあるものになり、新聞の特質や、使い方の効果も分かってくるのではないか。このような問題意識の下で行われた学習である。

【学習事例】
@関連資料の展示
 図書委員会の生徒が気になった新聞記事を取り上げる。そして、その新聞記事のテーマをより深く知るため、新聞記事と一緒に、関連図書やデータベース検索で集めた他の新聞社の記事を展示する。このように、一つのテーマをいろんなメディアを使って見てみる。例えば、美味しんぼの鼻血問題をテーマとして取り上げた時は、新聞記事と一緒に、ビックコミック、原発関連の図書、他の新聞社の鼻血問題に関する記事が展示された。

A紙面比較
  同日の様々な新聞社の記事を並べて展示し、通りかかる生徒が記事に対してポストイットにコメントを書いて張っていく。例えば、ISによる日本人殺害、鎌倉が世界遺産選考から落選といった記事が取り上げられた。こうした記事に、通りかかる生徒がコメントを張っていき、他の生徒がそのコメントに対する感想を述べていく。ある女子生徒は、記事を比較しながら「こっちの写真の方がもっと迫力あるよね」という感想を述べていた。

B新聞づくり
 校外学習の事前学習として、生徒たちは記事や資料を集めて、新聞づくりを行う。横浜への校外学習の際、生徒たちは、新聞記事、横浜駅の観光案内所に置いてあるパンフレット、駅弁のパッケージを資料として新聞づくりを行った。 また、社会科の授業では、校外学習の事前学習として、生徒たちは歴史新聞を作った。鎌倉への校外学習の事前学習の際は、古典の平家物語で那須与一が扇の的を射ったことを、その時代に号外があったと仮定して号外づくりが行われた。生徒たちは、「見事にやった」や「わが祖国の英雄」といった号外を出した。

(2)プレゼンテーション「報道特集」(中学2年 国語)

社会に目を向け意見を伝えよう

種々の情報源と一緒に新聞データベースを使う

【学習にあたり】
 1年生の国語の授業では、「竹取物語の時代」や「太平洋戦争のころの暮らし」などを調べ、発表している。また生徒たちは、普段から新聞のスクラップをやっている。そこで、2年生では、テーマについて調べ、意見をもち、社会に目を向けてほしいと考えた。

 国語のプレゼンテーションの単元で、内容を「報道特集」とし、一つのテーマをいろいろな角度から伝えるニュースの形をとった。説得力あるニュースの伝え方を工夫して、発表することを目標とした。 また、調べる段階においては、種々の情報源を、特質に応じて使い分ける姿勢を重視した。このねらいとしては、新聞のデータベース活用の有用性を実感させたいと考える。

【学習のながれ】
 生活班のなかで、社会に対する一つのテーマを決めて、訴えたい意見を決める。そして、その意見に対する情報を新聞やネットから得た資料で調べる。その後、生活班の6人でなかで、話す人、指す人、セリフを書く人に分担して、大型テレビやOHC、ネットを用いて発表する。

事前
新聞切り抜きスクラップなどを課題とし、社会に対する興味を養う。
委員会活動として新聞記事と図書資料などのテーマを展示する。
第1時
1、目標と学習の流れを確認する。
グループでテーマを決める。
新聞などを見ながら、訴えたい意見を話し合う。
役割分担を決める。
第2時〜第6時
2、情報収集
自分たちの言いたいことを伝えるために、効果的で説得力の高い情報を探す。
3、構成
全体の流れを考える。
さがした情報の中から、自分たちの主張や構成を考えて選んでいく。
4、フリップボードを作る。
画用紙一人一枚を、どう効果的に使うかを考える。
説得力を増すためのデータ提示を工夫する。
5、発表用台本を作る。
話し手の動き、フリップボードを指し示すタイミングなども記入しておく。
6、発表練習
セリフや、情報の提示のしかたやタイミングを練習する。
グループ内でお互いに批評し合う。
第7時
7、発表
発表時間は1グループ5分程度とする。
感想用紙を交換する。
事後
8、他クラスのビデオを見る。
プレゼンの注意事項をまとめる。
【第2時(情報収集)】
○本時の流れ
今日は何するの?
今日の目標は、「テーマにあう情報・資料をさがす」ことを確認する。
思い出そう!
去年のプレゼンのときの反省点注意点は?
教科書の説明文で、効果的に使われているものは?
何をどうさがす?
情報の集め方を確認する。
事典、雑誌・パンフレット、新聞、データベース、インターネット、学校司書から情報を集める。
作戦タイム
自分たちのテーマで説得力を高めるにはどんな情報資料がよいか、班で相談してアイディアを出し合う。 いざ、さがせ!
班のなかで担当を決めて、それぞれ探しに行く。
相談タイム
班内で集めたものを提示する。
どれをどう使えばよいか、まだ足りないものはないか相談する。
次の時間の作戦…何をするといいか計画を立てる。

○生徒が設定したテーマ
 御嶽山の噴火、台風災害、広島土砂災害、津波、エボラ出血熱、デング熱、温暖化、ツバル島、高齢化問題、出生率、障碍者問題、消費税、ネット依存、女性閣僚の失脚、野々村県議、中国鶏肉事件、マララさん、ノーベル平和賞、イスラム国、東京オリンピック、リニアモーターカー

○生徒が利用した情報源
データベース検索 97%
新聞 87%
インターネット検索 83%
図書・雑誌資料 80%
他インタビューなど 17%

【学習を終えて】
  昔のオリンピックなどの古い記事になると、復刻版もないので、「データベース検索」は便利だと感じた。しかし、検索して探し出した記事をそのまま用いるのではなく、データベースを基にして、新聞を探し出し、実際の記事を見せた方が、迫力があった。

 生徒たちは、場合に応じて、新聞だけではなく図書も用いていた。例えば、「御嶽山の噴火の水蒸気爆発はどういうものなのか」を調べた生徒は、新聞ではなく、図書にも詳しく書いてあることに気付いた。その生徒は、司書の先生が持ってきてくれた『昭和災害史』という図書から「有珠山の場合はどうなのか」といったことも調べていた。

 しかし、「何日には何人なくなった」とか、「次は何人に増えています」といった刻々と変わっていく数字のデータの場合は、新聞の方がいいと考える生徒もいた。この生徒は、もしかしたらメディアの使い分けをしようという意識が少し出てきたのかもしれない。

質疑応答

Q:司書さんとの連携はどのようにとっているか?
A:特別な時間などは設けず、昼休み等に図書室に足を運んだり、逆転の発想で、国語の授業を図書室で行ったりしたことにより、おのずと司書さんが授業等に関わってくれるようになった。具体的には、注目すべき事件が発生した際に、それに関連する資料を図書室に掲示してくたり、本を探せない生徒へのサポートをしてくれたりなどである。いい距離感を保ちながら、生徒たちの活動を見守ってくれている。

Q:どの程度のペースで、図書室の展示を更新しているか?
A:司書さんに協力してもらえるときは週に一回、生徒の委員会活動などで展示するときは、月に一回程度。

Q:新聞のスクラップづくりなどは、全校生徒が自由に参加しているのか?
A:基本的には担当する学年の生徒が中心。

Q:他教科との連携は?
A:展示してある生徒の作品を他の教科の先生が通りすがりに見て行くだけでも少なからず影響があると思われる。校外学習や、そうごうの時間なども積極的に活用していくことにより、おのずと他教科の先生も関わっていくことになり、協力も得られる。根気良く、何年もかけてそのような環境を作っていく。

Q:新聞づくりなどは、はじめから自由に行わせているのか?
A:最初は、型を教えていく。小学校でよくみられる学級新聞のようなものよりもより高度な、「新聞」の書き方を身につけてほしい。

感想等
・このような活動は、新聞等のデータベースの活用方法を身につける良いきっかけになるのではないか。
・ただ事実を羅列するだけでなく、情報A+情報B→意見Cという構成が取れるよう、常に訓練している。

 以上のようなやりとりがあった。

 (2)の学習において、生徒たちは、自分なりに図書館の様々な情報源を用いて、答えのない社会の問題について探っていたようであった。多くの生徒が「データベース検索」を利用しているなか、社会が刻々と変わっていくことを捉えるために新聞を使っている生徒がいた。ネットの使用が生徒たちには当たり前になっている現代において、新聞も生徒たちにとって「生きて動いている社会を実感」するために重要な情報源だと改めて感じた。